【米国株ウォッチ】AI時代に乗り遅れた感のあるインテル、巻き返しなるか?

AI要約

インテルの株価が急落し、長期的な見通しやAIへの対応能力に疑問が投げかけられている。

インテルはAI時代の波に対応し、CPUからGPUへの需要が増大する中で苦戦している。

同社はAIコンピューティング分野の強化やファウンドリー事業の転換など、将来に向けた取り組みを進めている。

【米国株ウォッチ】AI時代に乗り遅れた感のあるインテル、巻き返しなるか?

インテル(ティッカーシンボル:INTC)の株価は今年、1月上旬から約38%下落するという大荒れの模様となっている。対照的に、ライバルのAMDは同期間に約17%上昇した。

PC市場がコロナ禍での低迷から回復するにつれて、今年、インテルの業績は回復すると予想されている。しかし、多くの投資家はインテルが人工知能(AI)の時代を乗り切る能力に懸念を抱き、同社の長期的な見通しについては慎重な見方をしているようだ。また、インテルが半導体のファウンドリー大手になるという計画が実現するかどうかについても疑問視されている。

■AI時代の波とインテル

生成AIへの関心の高まりは、インテルにとってマイナスになると見られている。インテルはAMDにサーバー市場のシェアを奪われているが、AIのトレンドは、インテルが得意とするCPUではなく、計算量の多いAI処理に適したGPUの需要を急増させる結果となった。

通常、AI処理に使用されるサーバーには、CPUとGPUの両方が組み入れられるが、複数のGPUを駆動させるのに必要なCPUは通常1つだけである。さらに、エヌビディアといったベンダーは、インテル製品ではなく、より低消費電力のARM製品をシステムに採用しようとする動きもある。

PC向け半導体の市場にも課題が見える。同市場では、インテルが依然として圧倒的な地位に君臨するが、AIの時代には、PCメーカーがより多くのAIをデバイスに組み込もうとするため、さらなる競争が促進される可能性がある。例を挙げると、半導体の設計が主軸のARMと、モバイル向け半導体大手であるクアルコムの両社は、PC分野にも進出している。結果的に、マイクロソフトが手がける新型PCであるCopilot+ PCには、AI処理の負荷に耐えつつも消費電力は少ない、ARM製の半導体が採用されている。

現在、インテル自身もデータセンター向けに特化したGaudi 2AIアクセラレーターや、より新型のGaudi 3 AIアクセラレーターを投入し、AI分野でより大きな役割を果たそうとしている。同社は価格競争に重点を置いているようで、Gaudi 2を8つ搭載したシステムの販売価格は約6万5000ドル(約1000万円)で、他社が販売する類似のシステムに比べ、価格は約3分の1だ。インテルはGaudi 3について、最も人気のあるAIアクセラレーターの1つであるエヌビディアのH100と同様の性能を、かなり低いコストで実現するとしている。とはいえ、エヌビディアは、より新型のH200を持ち、総合的な性能の点でインテルの先を行く可能性が高い。

インテルもAIコンピューティング分野の強化に取り組んでいないという訳ではない。先月には「Lunar Lake」という開発コードネームで知られるPC向けの新型プロセッサを発表し、第3四半期には出荷を開始する見込みだ。しかし、これらの発表後にインテルの株価は下落した。

■ファウンドリーへの転換進む

インテルはまた、他の半導体企業向けにチップを生産し、TSMCやサムスン電子のような企業に対抗するファウンドリーになることに大きく賭けている。しかし、同社は失策により、ウェハー製造のかなりの部分を外注することになったため、この事業は現在複数の困難に直面している。インテルは、2023年の製造部門(今だ自社製品の製造が多くを占める)の営業損失が70億ドル(約1兆1000億円)だったと発表し、黒字化は2027年頃になることを示唆した。インテルは製造技術の面でも遅れをとっており、TSMCのようなメーカーに追いつけるかどうかは未知数だ。また、製造を委託する顧客にとって、インテルは取引相手であると同時に潜在的な競争相手でもあることを考えると、半導体の設計や戦略など知的財産を公開することに対する不安を顧客に感じさせる可能性もある。