「国有化」ルネサス、柴田社長が大型M&Aで復活主導-株価は10倍超

AI要約

ルネサスエレクトロニクスは国有化から復活を果たし、10年以上幹部として同社を率いた柴田英利社長兼CEOが立役者である。

半導体関連株の好調な流れに乗り、ルネサスの純利益は過去最高を記録し、株価も10倍以上に伸びた。

1980年代に圧倒的な世界シェアを誇った日本の半導体産業は衰退し、ルネサスも統合後赤字が続いていたが、柴田氏の策略により復活の兆しが見え始めている。

「国有化」ルネサス、柴田社長が大型M&Aで復活主導-株価は10倍超

(ブルームバーグ): 日本企業による海外での合併・買収(M&A)にはリスクが伴い失敗事例も枚挙にいとまがないが、半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスは事実上国有化の状態から数千億円規模の大型M&Aを連続して手掛けることで復活の地歩を固めた珍しいケースといえる。その立役者が10年以上にわたり幹部として同社を率いてきた柴田英利社長兼最高経営責任者(CEO)だ。

ルネサスの前期(2023年12月期)の純利益は前の期比31%増の3370億円と過去最高を記録した。株価は柴田氏が参画した13年の安値から10倍以上に伸び、6月には一時、10年4月の会社発足以降で初となる3000円台を回復した。

人工知能(AI)ブームなどを背景に米エヌビディアを筆頭とする半導体関連株は世界的に軒並み好調で、ルネサス株もその流れに乗った格好だが、そんな同社も10年ほど前までは長期間赤字が続き、瀕死(ひんし)の状態だった。

柴田氏(51)は都内の本社での6月のインタビューで、13年に入社した当時は「本当に会社がつぶれそうだったので何とか立ち直る、独り立ちするというところが目標だった」が、そこから大分持ち直してきたと振り返る。

日本の半導体産業は1980年代に圧倒的な世界シェアを誇ったが、その後は衰退を続けた。ルネサスは2010年に三菱電機と日立製作所、NECの半導体部門が統合して誕生したが、携帯電話市場の縮小に東日本大震災での主力工場被災が追い打ちをかけて急速に業績が悪化。政府が9割以上出資して設立された産業革新機構(INCJ)を中心とした連合から13年に救済出資を受けた。INCJは69%を保有する筆頭株主となり、事実上国有化された。

メリルリンチ日本証券などでの勤務を経て、当時はINCJの執行役員だった柴田氏は、ルネサス入りを決めたときの心境は火中の栗を拾う気持ちだったという。入社後はまず人員削減やスマホ用半導体など非注力事業からの撤退などを断行。次の段階として、生み出したキャッシュや利益を活用して「自分たちに足りない製品分野を補おう」とM&Aを加速させていった。