身内から、格安で住まいを譲ってもらえる話が来ました。安い物件なら給与が低くても住宅ローンを組めるでしょうか?

AI要約

不動産価格の上昇と実質年収の減少により、マイホーム購入が難しくなっている状況。

親族間での空き家売買が増加する中、親族間売買での住宅ローン利用には制限がある。

相場価格とのかい離や贈与税の問題など、親族間売買には注意が必要。

身内から、格安で住まいを譲ってもらえる話が来ました。安い物件なら給与が低くても住宅ローンを組めるでしょうか?

不動産価格をはじめとした、さまざまな物品が値上がりしているにもかかわらず実質の年収は30年間で大きく落ち込んでいるため、経済的な理由でマイホームの購入をためらう方も多いでしょう。

一方で相続などに起因した空き家の発生も問題となっており、親族間で不要となった実家を売買するケースが今後増加する可能性があります。この際、購入資金を住宅ローンで賄うことはできるのでしょうか? 本記事で解説していきます。

近年ではマイホーム価格の上昇に加えて年収も減少しており、マイホーム取得はハードルが高い状況といえます。そこで、家計への負担を抑えるため、新築ではなく中古物件の取得も選択肢のひとつになるでしょう。

住宅ローンは、中古物件でも利用できます。しかし、その売買の相手方が「親族」だと話は違ってきます。多くの金融機関では、親族間売買での住宅ローン利用を制限しているためです。親族間売買では、住宅ローンで融資したお金を他の用途に使われてしまう恐れがあるからです。

例えば、事業資金の融資を受ける際、マイホームを担保に事業資金の融資を受ける場合と、親子でマイホームを売買して住宅ローンの融資金を事業用途に使用するのでは、融資審査の難易度や融資金利の条件が住宅ローンを利用した方が有利になってしまいます。こうした理由から、住宅ローンの親族間売買を制限する金融機関が一般的です。

図表1

筆者作成

住宅ローンのほかにも、親族間売買で注意すべき点があります。それは、「マイホームの売買価格と市場価格のかい離」です。

親族間売買では、相場よりも売買価格が安くなる傾向があるといわれています。もし、身内のよしみで相場価格よりも安い値段で売買してしまった場合、相場価格とのかい離分は「贈与」とみなされ贈与税を課税されてしまう可能性もあります。

しかし、ふたつとして同じものがないマイホームなどの不動産の価格は、「適正価格」を見いだすのが難しい性質があります。周辺相場を参考するにしても、不動産鑑定士を活用するにしても、結局は自己判断で価格を定めるしかないので、みなし贈与の懸念は残ってしまいます。