【このままでは太陽光パネルの二の舞に】EV覇権を狙う中国の大戦略、もう「安かろう悪かろう」ではないその実態とは?

AI要約

欧米各国が中国製電気自動車(EV)に対する関税を設定する理由とその背景について詳細に解説。

中国政府の不公正な補助制度により、中国製EVは市場を歪める不当な競争力を持っており、各国が関税導入を模索している。

欧州では暫定税率を設定し、調査結果を踏まえた最終課税率の決定を進めているが、中国製EV問題には依然として解決の道のりが遠い。

【このままでは太陽光パネルの二の舞に】EV覇権を狙う中国の大戦略、もう「安かろう悪かろう」ではないその実態とは?

 米国バイデン政権は、年内に中国製電気自動車(EV)に対する関税を100%にする方針だが、欧州連合(EU)の執行機関欧州委員会も中国製EVに対する関税を暫定的なレベルだが最大38.1%に設定する方針を発表した。

 カナダ政府も同様の関税を検討中と報じられている。各国が中国製EVを市場から排除する理由は、中国政府の不公正な補助制度が作りだした中国EVの不当な競争力にある。

 中国政府が巨額の補助金をEV市場につぎ込んでいるので、中国製EVは不公平な競争力を持ち市場を歪めるのが、課税の理由だ。

 そうは言っても、中国製EVが市場に受け入れられない品質であれば、米国もEUも関税により輸入を抑制する必要はなさそうだ。

 欧米が大きな比率の課税を検討するのは、中国製EVが価格も品質も競争力を持つからに他ならない。むろん、中国政府に自国内の走行データを知られてしまう安全保障上の問題もある。

 米国の自動車専門誌は、「中国製品に消費者が持つ安かろう、悪かろうのイメージはEVについては過去のもの」とも伝えている。

 欧州は中国製EVの蟻地獄(「中国が仕掛けたEV蟻地獄に陥る欧州、日本の行方は」)から逃れようともがき始めたが、その道は遥かだ。

 昨年10月4日、欧州委員会は、中国製EVに関する政府の補助金の調査を開始した。中国政府がEVメーカーと消費者に提供しているさまざまな形の補助が、中国製EVの欧州での販売価格を引き下げている疑いだ。

 今年6月12日に欧州委員会は調査結果を発表した。中国製のバッテリー稼働のEV(BEV)は不公正な補助金を得ており、欧州のEV生産者に経済的損失をもたらしているとして、世界貿易機関(WTO)規則違反に匹敵する手法として問題の解決策を中国当局者と議論し、もし7月4日までに合意に達しない場合には、次の暫定税率が調査対象となった3企業に対し導入される。

 BYD(比亜迪) 17.4%

 ジーリー(吉利汽車) 20%

 SAIC(上海汽車集団) 38.1% 他の企業については、以下の暫定税率が適用される。

 調査に協力したが対象とならなかった企業 加重平均21%

 調査に協力しなかった企業 38.1% 既に欧州委員会と中国当局との議論は開始されていると報道されているが、7月4日までに合意に達する可能性は薄いだろう。その場合には、暫定税率の課税開始から4カ月以内、つまり11月4日までに、最終課税率が決定する。