「撮り鉄がポイ捨てしたゴミが庭に紛れ込んで困っている」見つけたら警察に通報してもいいのか? 弁護士が解説

AI要約

撮り鉄という趣味におけるトラブルとして、無断で私有地に入ったり、ゴミをポイ捨てする行為が報告されている。

ゴミをポイ捨てする行為は廃棄物処理法や軽犯罪法に違反する可能性があり、場合によっては警察に通報することも考慮される。

自治体の環境整備業務やゴミ捨て禁止条例を活用して、問題解決に向けた対策を講じることが重要である。

「撮り鉄がポイ捨てしたゴミが庭に紛れ込んで困っている」見つけたら警察に通報してもいいのか? 弁護士が解説

 趣味で鉄道の写真を撮る「撮り鉄」をめぐるトラブルは少なくない。私有地へ無断で入る、またはゴミのポイ捨てなど様々な被害も報告されている。一部の撮り鉄の迷惑行為にどういった対策が可能なのか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する

【質問】

 私の家は電車が走る河川沿いで、その路線は珍しい電車が通るため、撮り鉄たちがカメラを構えています。問題なのは、彼らのゴミのポイ捨て。菓子の袋などが風に飛ばされ、庭に紛れ込むのです。この現状には腹が立ちますし、彼らがポイ捨てする現場を見かけたら、速攻で警察に通報してもかまいませんか。

【回答】

 ゴミは『廃棄物処理法』の定める廃棄物です。同法第16条では「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」と定められ、違反すると5年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金で処罰されます。

 撮り鉄たちのゴミ捨てに正当な理由はなく「みだりに」捨てたことになりますが、この罰則は廃棄物の悪質な不法投棄を想定したものですから、ゴミのポイ捨てに適用するのは大袈裟すぎます。

 なお、『軽犯罪法』では「公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物又は廃物を棄てた者」を拘留、又は過料で処罰します。河川敷でのゴミの散乱がひどく、そこを利用する不特定の人にとって迷惑になれば、当然のことながら、公共の利益に反し『軽犯罪法』違反となります。また、河川法施行令では河川区域内(堤防の内側も含む)に、ゴミを捨てれば、3か月以下の懲役、又は20万円以下の罰金で処罰されます。

 さらに市町村によっては、通称「ポイ捨て禁止条例」で、ゴミ捨てを禁止している地域もあります。規制の対象は道路、広場、公園、河川などの公共の場へのゴミ投棄ですが、罰則がないのがほとんどです。しかし、都内のある区の条例では、ゴミが著しく散乱し、特に改善の必要があり、住民が熱心に美化に取り組んでいる地区を美化推進重点地区と定め、そこでのゴミ捨てに罰金を科しています。

 ご質問の場合、ゴミのポイ捨てが犯罪になる場合があるので、警察への相談も選択肢のひとつです。

 ただ、特定の人が繰り返さなければ、取り締まりは難しいかもしれません。それでもポイ捨て条例の有無に関わらず、環境整備は自治体の大切な業務ですから、被害状況を整理して相談すること、あるいは河川の管理者に、清掃やゴミ捨て防止の対策を講じるよう要請することも考えられます。

【プロフィール】

竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。

※週刊ポスト2024年7月12日号