動かさずに室内保管……の「箱入り愛車」もシッカリ劣化する! しかも超久しぶりでいきなり乗るのは壊れる原因だった

AI要約

クルマ愛を持つオーナーが愛車を保管する際に注意すべき点について解説している。長期保管時にはエンジンの健康状態を保つために定期的に走行する必要がある。

ガレージで保管する場合はタイヤの偏りを防ぐために定期的にジャッキアップすることが重要である。ゴム製品の劣化も考慮しなければならない。

愛車のエンジンのポテンシャルを引き出すために定期的な走行が必要であり、暖機が済んでから運転することが大切である。

動かさずに室内保管……の「箱入り愛車」もシッカリ劣化する! しかも超久しぶりでいきなり乗るのは壊れる原因だった

 クルマというのは日常生活に不可欠な道具という面もあれば、家族のようなパートナーと捉えているオーナーもいる。工業製品のなかでは、とくに擬人化されることも多く、それゆえに「愛車」という言葉が広く使われているという意見もある。

 そんな「愛車」を大事にしたいと思うばかりに、逆に機械としてストレスをかけてしまうことがある。極端な話をすると、新車購入からほとんど動かさず、ガレージ保管しているケースを想像してみよう。

 ガレージ内に空調をかけて、温度や湿度の管理をすれば塗装や樹脂パーツの劣化は最小限となるだろうし、パッと見たところは最高のコンディションを維持しているだろう。しかし、そうした状態で保管されたクルマに乗ることは非常に難しいといえる。

 なぜなら、長年にわたってエンジンをかけていないとすれば、エンジンオイルはオイルパンに落ちているだろうし、本来オイルで潤滑されていなければいけない部分も乾き切っている可能性が高い。つまり、エンジンをかけるには何らかの方法でオイルを循環させる必要がある。

 保管している期間にもよるが10年単位で動かしていないのならば、エンジンをバラして各部をチェックするほうが安心とさえいえるだろう。大事にしたい気もちはわかるが、過ぎたるは及ばざるが如しである。

 また、ガレージに長期間保管する場合には、クルマをジャッキアップした状態にしてタイヤを浮かせておきたい。タイヤの同じ箇所だけに車重がかかって潰れた状態がつづくと、タイヤが変形してしまうからだ。

 もっとも、タイヤをはじめとしたゴム製品は、たとえ屋内保管であっても時間経過によって劣化してしまう。

 芸術品のような位置づけならまだしも、クルマ本来の機能を維持した状態をキープしたい(つまり動態保存したい)のであれば、定期的にエンジンをかけ、実際に走行させる必要があるといえる。

 上記は極端なケースだが、スポーツカーなどの趣味車をセカンドカー的に所有している人のなかには「月に一度くらいしか乗らない」というオーナーもいるだろう。この場合でもエンジンオイルが十分に潤滑できる状態でない可能性もある。ひと月程度であれば、そのままエンジンをかけてしまっても問題ないかもしれないが、少なくともエンジンをかけてすぐに走り出すというのは避けたい。

 道路環境が許すならば、エンジンやトランスミッション、さらにはサスペンションなどのオイルを使っている各部位のなかでオイルが馴染むイメージでゆっくり走るといいだろう。

 期間をあけて走るのであれば、走行前にエンジンオイルやクーラント、タイヤ空気圧を確認することを忘れないようにしたい。

 そうして各部が暖まってきたら、幹線道路への合流や高速道路での加速といったシチュエーションで意識的にフルスロットル(アクセル全開)をするようにしたい。よくいわれるのは「フルスロットルによってエンジン内部や吸排気ポートに溜まったカーボンを吹き飛ばす」というものだが、法定速度内でフルスロットルにできるのはおそらく非常に短い時間だろうから、カーボンを吹き飛ばすまでの効果は期待できないかもしれない。

 それでもコンピュータ制御のエンジンであれば、たまにフルスロットル状態にすることで、元気な方向で学習が進むことが期待できる。小排気量エンジン車ならば、低いギヤのまま高回転までエンジンを使ってあげるのもいいだろう。

 あらためて注意したいのは、こうしてエンジンのポテンシャルを引き出すような運転は、しっかりと暖機が済んでいる状態で行うべし、ということだ。たまにはフルスロットルにすることが推奨されているからといって、エンジンかけたての、まだアイドリングが落ち着いていないような段階で高回転までエンジンをまわしてしまうのは百害あって一利なしといえる。

「クルマと会話する」という表現は、スポーツドライビングにおいて限界性能を探ったり、ポテンシャルを引き出したりすることをイメージさせるが、大事にしているクルマを久しぶりに走らせるときこそ「会話力」が大事になってくる。愛車を大事にしたいのであれば、動き出したときに各部が正しく機能しているか、どこか不具合は発生していないかを感じられるようなスキルを身につけることを目指したい。