老後に突然「家庭にも居場所がなくなる」男たちに「欠けているもの」

AI要約

本記事は、図書館やスナックなどの日常的な場面を通じて、経営の失敗や個人の行動についてユーモラスに描いています。

経済思想家の斎藤幸平氏が推薦した『世界は経営でできている』からの抜粋で、日常生活に経営思考を取り入れる大切さを考えさせられます。

また、家庭内や老後における人間関係や管理職のあり方についても触れられており、経営とは何かを考えさせられる内容です。

老後に突然「家庭にも居場所がなくなる」男たちに「欠けているもの」

 なぜ組織の上層部ほど無能だらけになるのか、張り紙が増えると事故も増える理由とは、飲み残しを放置する夫は経営が下手……。わたしたちはいつまで金銭や時間など限りある「価値」を奪い合うのか。そもそも「経営」とはなんだろうか。

 経済思想家の斎藤幸平氏が「資本主義から仕事の楽しさと価値創造を取り戻す痛快エッセイ集」と推薦する13万部突破のベストセラー『世界は経営でできている』では、気鋭の経営学者が日常・人生にころがる「経営の失敗」をユーモラスに語る。

 ※本記事は岩尾俊兵『世界は経営でできている』から抜粋・編集したものです。

 図書館における小競り合いを見てみよう。

 図書館の新聞コーナーは、カブトムシに対するクヌギの樹液のごとく/真夜中の電柱のごとく、高齢者および筆者を惹きつける。日本中の図書館で観察されていることなのだが、新聞コーナーでは人がひしめき、うごめいて、新聞を奪い合っている。

 ときどき「おいっ、新聞に折り目をつけるなよっ」などと怒号が飛ぶ。日本の高度経済成長を支えた、図書館に響き渡るほどの日米貿易摩擦的怒号だ。

 Z世代(2023年現在青春期にある若年層の世代)なんぞとは根性の入り具合/腰の捻り方から違う。この怒号の前に現代の若者など一目散に逃げだしてしまうほどだ。こうして、あっという間にこの「高度経済成長貢献怒鳴り人」は、図書館職員から要チェック対象としてマークされることになる。

 こうした小競り合いは自分の存在感を相手に認めさせたいがために引き起こされる。居場所を作るための闘いなのである。しかし居場所を確保するために揉め事のきっかけを作るようでは、結局は居場所を失う。

 同じ過ちは場末のスナックでも見られる。

 スナックは図書館の新聞コーナーに負けず劣らず高齢者の方々の集会場だ。そして夜も更けてくると、酒も進んで誰もが大声で話しだす。そんなとき突然に「おい、俺の歌を聞けよっ」と怒鳴る人が出てくる。

 深夜の店内が一瞬で、しん、とする。その高度経済成長貢献怒鳴り人は、不満げにマイクを握る。しかし他の客にしてみれば、無理やり聞かされる歌など仮に上手くても素直には聞けない。

 そのため曲が終わる前に他の客はぞろぞろと帰りだす。こうしてまた一つ怒鳴り人の出入り禁止場所リストが更新される。

 老後は家庭にも居場所がなくなるという人も多い。

 こうした人の多くは、家庭において企業のダメ管理職のようにふるまっている。

 家庭内ダメ管理職は配偶者や子の行動に対して命令はするが責任は取らない。明確な指針を示さずに、これがダメだ、あれがダメだと終わったことを責め続ける。当然ながら家族からは疎まれる。しかも現役のときほどの体力と気力はないから家族との力関係は徐々に逆転していく。

 その結果として家庭に居場所がなくなってしまうのである。

 つづく「老後の人生を「成功する人」と「失敗する人」の意外な違い」では、なぜ定年後の人生で「大きな差」が出てしまうのか、なぜ老後の人生を幸せに過ごすには「経営思考」が必要なのか、深く掘り下げる。