「親戚の子供を預かるためにたびたびパートを休むことに…」親戚に賃金を請求することはできないのか? 弁護士が回答

AI要約

法律相談において、親戚の子供を預かる際の賃金請求可能性について解説。

法的根拠や過去の約束が重要であり、準委任契約の性質も考慮。

不当利得の制度や交渉の重要性も述べられている。

「親戚の子供を預かるためにたびたびパートを休むことに…」親戚に賃金を請求することはできないのか? 弁護士が回答

 親戚の子供を預かるためにパートを休んだ場合、本来発生するはずだった賃金を親戚に請求することはできるのだろうか? 実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。

【質問】

 義妹が出産後、育休期間を終え、仕事復帰しました。しかし、姪が体調を崩すたびに、「仕事を休めないから預かって」と突然私のところに連れてきます。私もパートをしているのに、そのたびに休むことになり困っています。休んだパートの賃金を義妹に請求することは可能でしょうか。(埼玉県・50才女性)

【回答】

 法的に請求できるかどうかの質問として検討します。法的に請求できる場合とは、義妹が支払わなければ、裁判に訴えて判決をもらい、強制的に取り立てできる権利がある場合です。こうした権利(請求権)が発生するためには、義妹との合意か、法的な根拠が必要です。

 つまり、これからの分については今後の約束次第で請求が可能となるのです。過去分についてですが、あなたは義妹に散々サービスしましたが、報酬について義妹と話し合ったことはありますか。

 あなたが善意で姪の面倒を見たのであれば、義妹は当然タダのつもりだったのでしょうが、それが度重なるにつれ、あなたが不満を感じ始めたものと思います。あなたが行ったことは、幼児の保育というサービスで、法的には「準委任」という関係になります。

 この準委任には民法の委任の規定が準用されますが、委任では「受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない」と定められています。つまり、当初に約束がなければ報酬請求権は発生しません。もっとも、自宅からの交通費など経費がかかっていれば、その分の請求は可能です。

 とはいえ、あなたがパート収入を失っているのに、義妹が子供の面倒をタダで見てもらうというのは不公平感があります。民法には「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う」という不当利得の制度があります。損失を受けたことで利益を得た人がいれば、損失分を返してもらえますが、「法律上の原因」がないことが前提です。

 あなたと義妹との間には、幼児の面倒を見る準委任契約があり、法律上の原因があったといえるため、不当利得の返還請求もできません。ですから、報酬も失ったパート代の請求もできません。義妹にパート休業で減収していることを話して交渉してはいかがですか。これからも面倒を見てもらう協力が必要なら、過去分も支払ってもらえるかもしれません。

【プロフィール】

竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。

※女性セブン2024年7月4日号