新NISAで家計の「外貨」保有比率が過去最高。四半世紀で「5倍増」の意味は…

AI要約

日本の家計部門が投資行動を活発化させている様子がうかがえる資金循環統計が公表された。

新NISA導入後、家計の金融資産は増加し、特に株式や外貨性資産への投資が伸びている。

家計の資産配分が「貯蓄から投資」へと向かっており、外貨性資産への配分が増加している傾向が強い。

新NISAで家計の「外貨」保有比率が過去最高。四半世紀で「5倍増」の意味は…

日銀は6月27日、2024年3月末時点の資金循環統計を公表した。その中身を見て、日本の家計部門の投資行動が「いよいよ動き出した」印象を抱いた。

政府・与党が推進する「資産運用立国」実現に向けた動きの中で注目の集まる家計の金融資産残高は前年同期比7.1%増の2199兆円、5四半期連続で過去最高を更新した。

残高を押し上げたのは事前に想定された通り、株式や投資信託などのリスク性資産だった。具体的には、投資信託が同31.5%増の119兆円、株式等が同33.7%の313兆円と著しく伸びた。

1月に導入された新たな少額投資非課税制度(新NISA)が確実に効果を上げていると評価していいだろう。

家計金融資産の半分以上を占める現預金が投資に向かい、政府が目指す「成長と分配の好循環」の実現に近づいているのだから何も問題はなさそうだが、現実には、制度導入の効果より「副作用」に注目が集まっている実態がある。

家計の金融資産の動きをもう少し詳しく見てみよう。

前年同期比で大きな伸びを記録した株式等の(家計金融資産に占める)構成比率は14.2%となり、統計開始以来の過去最高を更新した。これは紛れもなく制度導入のポジティブな効果と言える。

一方、外貨預金や外貨建て投資信託など外貨性資産の構成比率(筆者による試算)も4.2%となり、やはり統計開始以来の過去最高を更新している【図表1】。

2020年以降の伸びはどう見ても顕著で、新NISAの導入以前から「貯蓄から投資」の動きが「円から外貨」の流れと軌を一にしてきた構図が透けて見える。

そうした変化の背景には、円安の進む為替相場はもはや過去の水準には戻り得ないという意識や感覚の(家計部門における)広がりがあったかもしれない。

近年は訪日外国人観光客(インバウンド)の消費行動をクローズアップした報道が増え、「強い外貨」の現実を意識させられる機会も多くなった。裏を返せば、繰り返し「弱い円」の立ち位置を意識させられる中で、資産防衛の手段としての外貨投資に意欲が向かうのは自然な流れとも言える。

下の【図表2】は、今回公表された2024年3月末時点の家計金融資産の内訳(構成)を、2000年3月末時点のそれと並べて比較したものだ。

およそ四半世紀の間に外貨性資産の構成比率は5倍弱に膨らんだ(0.9%から4.2%)ことが分かる。

大幅な伸びをけん引したのは、三菱UFJアセットマネジメントが運用する「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(いわゆるオルカン)に象徴されるような外貨建て投資信託だ。次いで、米国株を対象とする個別株投資など対外証券投資も増えている。

また、現時点の構成比率としては大きくないものの、インターネット銀行を中心に特別な高金利を提示する外貨預金も販売されており、今後存在感を増していく可能性もある。

いずれにしても、家計の金融資産が「貯蓄から投資」に向かう中で、国内株への資産配分も確かに増えているが、それ以上に外貨性資産への配分に勢いがあることは間違いない。