「自分では営業できないくせに」社員に無視され陰口をたたかれた"二代目社長の妻"が採った組織立て直しの秘策

AI要約

松本めぐみさんは、埼玉県の自動車部品メーカー「松本興産」の2代目社長と結婚後、同社に取締役経理総務部長として入社。会社が売上高記録を更新するも、利益率が急落し、社内で猛反発を受ける。

勧められた税理士の言葉を受けて入社した松本めぐみさんは、夫と一緒に経営することへの覚悟と取締役として初めての経験に戸惑いつつも、貢献したいと考える。

社内で初めて取締役に就任した松本さんは、経理担当者から無視される厳しい状況に直面し、会計処理のクラウド化などの変革を進めるが、社員からは一部嫌われることを覚悟する。

松本めぐみさんは、埼玉県の自動車部品メーカー「松本興産」の2代目社長と結婚後、同社に取締役経理総務部長として入社した。ある年、会社の売上高が過去最高を記録。社内が沸き立つ中、利益率が急落したことを指摘して社内から猛反発を受けたという――。

■税理士の「そろそろ覚悟を決めて」に折れ入社

 自動車部品の製造を手がける中小企業「松本興産」の2代目社長と結婚し、3年間の専業主婦生活を経て同社の取締役に就任した松本めぐみさん。結婚前は半導体メーカーや外資系ホテルで社員として働いていたが、今回はいきなり経営層、しかもまったく未経験の総務・経理を監督する立場となった。

 入社のきっかけは、顧問税理士の勧めだったという。「中小企業は経理に信用できる人を置くことが大事だから、奥さんもそろそろ覚悟を決めて経営に入りなさい」――。そう聞いた瞬間、松本さんは思わず「え~、無理です」と言ってしまったという。

 「夫と一緒に経営するとなると、ケンカが増えそうで嫌だったんです(笑)。でも、税理士さんの言うこともわかりますし、あとはやっぱり夫への愛ですよね。以前から経営に関する苦労話をよく聞いていたので、何とか私が助けになれたらと思いました」

■話しかけても無視

 松本興産の拠点は、埼玉県秩父郡にある人口1万人ほどの小さな町。会社は創業50年以上の地元企業。そこに突然“東京から来た社長の奥さん”が取締役として入ってきたのだ。社員の反応は歓迎とは程遠いものだった。

 経理担当者には初日から無視された。

 当時、同社の帳簿は手書きのノートで、担当者が自分独自のスタイルでつけていたため、ただでさえ会計知識のない松本さんにはまったく読み解けなかったという。教えてもらおうと思って話しかけても振り向いてもくれない。見かねた隣席の社員が取りなしてくれて、ようやく会話ができるようになった。

 松本さんは「みんな、私が何か面倒くさいことを始めるんじゃないかって、脅威を感じていたんだと思う」と振り返る。

 「無視する気持ちもわかるんですよ。私が来たことで今までのやり方が変わったら、たいていの人は自分が否定されたと感じて傷つきますよね。わかるんですが、それでも結局、手書きの帳簿は廃止してすべてクラウド化しました。嫌われても仕方がない、そうするのが会社のためだと思って」