クリエーターの目線で紐解く「Apple Vision Pro」、「Apple Intelligence」の可能性──WOW・高橋裕士、かように語りき

AI要約

Appleの新デバイス「Apple Vision Pro」が、日本で6月28日に発売される。WOWの高橋裕士が「WWDC 2024」で体験し、感動と刺激を受けた。

次世代AI「Apple Intelligence」と「Apple Vision Pro」の日本での発売が注目されており、クリエイターにとっては新たな視点や可能性が広がる時代がやってきた。

クリエーターとして、独自の視点と人間の興味を喚起する表現が重要であり、Apple製品の愛情や使いやすさが魅力である。ユーザーとしての期待と活用することを楽しみにしている。

クリエーターの目線で紐解く「Apple Vision Pro」、「Apple Intelligence」の可能性──WOW・高橋裕士、かように語りき

Appleの新デバイス「Apple Vision Pro」が、日本で6月28日に発売される。映像、3DCGなどのビジュアル領域で長年活躍するWOWの代表、高橋裕士が、「WWDC 2024」の会場に訪れ、実際に試した。

6月10日(米時間)、アメリカ・クパティーノで「WWDC 2024(Worldwide Developer Conference・世界開発者会議)」が開催された。AppleのOSにまつわるさまざまなニュースが発表されるなかで、とりわけ注目を集めたのが、独自AIの「Apple Intelligence」と「Apple Vision Pro」の日本での発売だ。一般ユーザーにとっては、未来すぎるツールに見えるこのデバイスや、AppleのAIについて、クリエーターからはどう見えたのだろう。現地に訪れて実際に試したビジュアルデザインスタジオ「WOW」代表を務める高橋裕士に訊く。

高橋裕士(以下、高橋) Appleの発表はいつも魔法がかかったような印象を受けていました。オンラインでそう感じていたものを今回、はじめてリアルで体感し、シンプルに感動しました。と、同時にこれは大変なことが起きたぞ、というのが素直な感想です。正直、違う世界に連れていかれたばかりで、自分の中でまだ整理ができていないです。「Apple Vision Pro」、すごいの出たなって。時間が足りなくなりますよね、あんなデバイスがあると。コンテンツを作る側としては、例えば、iPhone用に縦動画を作って欲しいとか、普段クライアントからさまざまなリクエストを受けます。それに応えて世界観を作り出すのがぼくらの仕事なので、この新しいvisionOS 2にどう対応していこうか、とそんなことばかりを考えていました。

──クリエーターとして新しいデバイスに対応するうえでなにが大切ですか?

高橋 「Apple Immersive Video」なども試してみましたが、簡単に言うと、目の前にまったく違う国のルールがぼんっと持ってこられた感覚です。そもそも空間コンピューティングは、Appleにとってもこれまでのフォーマットとはまったく違うものだと言っていますね。今回のリリースで日本語にも対応しますし、コンテンツの臨場感を強調したものやイマーシブな表現はこれからたくさん出てくると思います。発信する側、クリエーターとして大事なのは、臨場感やイマーシブという要素を超えて、人間の興味を喚起するような新たな視点を持つことではないでしょうか。そうした独自の視座を持って作られたものがやっぱり面白いと思う。それと長年、Appleのプロダクトに触れていて好きだと思うのが、人間の心情に訴えかけるようなところが守られている点です。デザインがかっこいいとか、モラルがあるとかそういうのもあるけど。「Apple Vision Pro」は、彼らの愛情をすごく感じます。

──仕事で「MacBook Pro 14インチ」と「iPhone 15 Pro」を使っている中で、「Apple Vision Pro」も使いますか?

高橋 もちろん、自分でも仕事で使おうと思っています。これまでAppleが新製品発表で語ってきた未来は、僕らのようなクリエーターは感覚的に理解できましたが、今回のリリース内容は、ユーザーにとってもすごいところにジャンプするのは間違いないと思っています。「WWDC 2024」でさまざまな未来が提示された中で、定着するものはなんだろうって。基本的に期待しかありません。

──Siriが強化され、新たに登場する「Apple Intelligence」はクリエイティブワークに影響しますか?

高橋 選択肢の幅が広がると思っています。ただ、AIが前提の時代になると、そのアウトプットを鵜呑みにしてしまう危うさはありますよね。僕の世代はプログラムを書くことから知っているけれど、AIのアウトプットがニーズと違うことに気が付かないまま制作に活用されてしまうシーンも出てくるかもしれない。どんなツールが生まれるとしても、あくまでもツールであって、それが答えになることはないですね。

もう少し柔らかい話をすると、紹介されたユースケースの中にあった、リスケジュールされた会議と娘の発表会がバッティングするかもしれないというシーンについて。関連する個人データを「Apple Intelligence」が処理して、会議と発表会の場所や時間を考慮してくれるというのはとても便利ですよね。ただ、ぼくは発表会の会場を間違えてしまうお父さんがいても良いじゃないって思っちゃう。会場が原宿だと思い込んで原宿に行ったら、実際は渋谷だったとか。そういうチャーミングなところや、娘や妻に怒られた出来事や経験みたいなものも、家族にとっては大事だなって個人的には思います(笑)。それはともかく、OSの緊密な連携によって情報がシームレスにつながり、最適な解が常に出るのは確かに便利ですよね。

iPhoneはなぜヒットしたのか。ぼくが思うのは、キーボードがなくなったからだと考えています。ディスプレイが無限に広がった「Apple Vision Pro」は、そういう意味でも面白さを感じています。そして新しい世代の人がどう感じるのかとても楽しみですね。

■高橋裕士

WOW inc.代表。1997年仙台で会社設立。2000年に東京、2007年にロンドン、2018年にサンフランシスコへ活動の場を広げる。