就活で人気のコンサル業界、思考力を試す面接「教科書のデジタル化に賛成か反対か、理由と共に答えてください」どう答える?
ケース面接はコンサル業界の入社試験であり、問題解決力を測るための試験である。
本記事では、実際のケース面接問題に挑戦し、適切な回答方法を示している。
入社試験を突破するためのポイントや提案方法が具体的に説明されている。
今、就活市場で人気が高いコンサル業界には「ケース面接」と呼ばれる独特の入社試験がある。志望者の問題解決力や地頭力を測る試験だ。新刊『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』は、大手コンサルティングファームの入社試験に対して、現役コンサルタントや内定者の解答を集約した1冊だ。本稿では「選考を突破するためのケース面接の答え方」について、本書から一部を抜粋・編集して紹介する。
● 「問題解決の思考力」を測る入社試験
ケース面接はコンサルティングファームの入社試験で必ず出題されるタイプの面接で、「問題解決の思考力」を測るためのものです。
面接官からは、企業や政府・自治体が抱える問題を提示され、あなたはこの問題を解決する打ち手を検討していきます。
では、次のケース面接問題に挑戦してみましょう。
● コンサルの入社試験に挑戦!
面接官:
教科書のデジタル化に賛成か反対か、理由と共に答えてください。
● 回答のヒント
・デジタル化とは具体的にどのような状態を指すのかを明らかにしてから問題に取り組みましょう。
・学習者視点や教育者視点など、デジタル化の是非を判断する立場を明確にして検討しましょう。
・賛成や反対のいずれであっても、デジタル化のメリットとデメリットの双方を整理して、主観に寄りすぎない客観性を担保した主張を目指しましょう。
回答のポイント:デジタル化によるメリット/デメリットを構造的に整理する
デジタル化のメリットとデメリットの双方を整理したうえで、どちらがより望ましいかを伝えましょう。
以下が解答例です。
※ケ―ス面接の答えは1つに定まるものではありません。提案内容が皆さんの考えと大きく異なる場合もあると思いますが、その際は思考の深さや提案内容の具体性を見比べて自己評価してみてください。
● 問題のあいまいな部分を定義する
今回、私は小学校などの初等教育現場を対象として、教科書のデジタル化の是非について検討します。
なお、デジタル化に取り組む教育現場として、以下のような環境をイメージしています。
【問題のあいまいな部分を定義】
・児童には無償でタブレット端末が支給されており、全教科の教科書やデジタル教材を使用できる
・教員は教員用の端末を操作して授業を進め、ワークやドリルなどの問題は児童のレベルに合わせて難易度が調整できる
・写真や動画の撮影など、一般的なタブレット端末の機能は使用できるが、インターネットやアプリの利用は制限されている
デジタル化によって影響を受ける層を大きく分類すると、児童と教員に分けることができます。
私は児童側の立場から検討を進めたいと思います。
● デジタル化によるメリットとデメリットを整理する
是非を判断するうえで、私はデジタル化によって児童側に生じるメリットとデメリットを考えてみました。
これには、紙媒体の教科書がタブレット端末に置き換わるといった「ハード面の変化」や、これまでの授業を効率的に学べたり、多様な学習コンテンツを提供しやすくなったりするといった「ソフト面の変化」があると思います。
● 検討内容を基に自分の意見を述べる
以上のメリットとデメリットを踏まえた結果、私は教科書のデジタル化に賛成します。
最も大きな理由は、学習機会の変化により享受できるメリットが大きいという点です。
デジタル化によって①映像コンテンツの利用、②学習格差の解消、③児童ごとの学習内容の最適化など、より高い学習効果が期待できると考えます。
たとえば、映像を上手く活用することで、文字情報だけではイメージしづらい内容もすんなり理解できるようになると考えます。
また、近年話題となっている地方と都市部の教育格差という社会課題に対しても、均一な質の教育を届けることが可能となり、解決につなげることができると考えます。
一方で、デジタル化によって様々なデメリットも生じると想定されますが、その多くは対策可能だと考えています。
当然ながら、集団での学びの機会を意識的に提供したり、端末の故障や不正利用が発生しないように管理を徹底したりする必要はあります。
また、児童と教員の関わり方なども変化することが考えられるので、児童への指導ガイドラインや新たなコミュニケーション施策などの充実化が求められると思います。
● 面接官からの質問
――児童の視点ではなく、教員の視点で考えた場合はいかがですか?
デジタル化に賛成します。教員側における最大のメリットに、「業務負荷の軽減」があると考えます。
教員の過酷な労働環境が問題視されていますが、デジタル化によって授業の準備にかかる負担を軽減し、成績の管理も簡素化することで、業務効率化を推進できると考えます。
――ハード面とソフト面に分けて、メリットとデメリットを検討されていましたが、他にどのような切り口があるでしょうか?
振り返ると、ハード面とソフト面の2つに分けたことで、その双方が影響を及ぼす「教室や家庭での学習環境」を分析しにくかった点が課題だったと感じています。
したがって、もうひとつの切り口としては、デジタル化をとおして実現される「学習環境」を起点として、メリットとデメリットを検討できるとよいと考えます。
――児童と教員の関わり方の変化について、より具体的にイメージを共有いただけますか?
デジタル化すると、手元の教科書とノートがデバイスに置き換わり、黒板もモニターやプロジェクタに置き換わると考えます。
このようにイメージすると、児童は教員や黒板の代わりにデバイスを見る時間が増え、ノートを取るという作業もなくなり受動的な学習時間が増えるのではないかと感じます。
対応策としては、児童が受動的になりにくいコンテンツを採用し、主体的に授業に取り組む環境を整えるとよいと考えます。
例えば、練習問題の分量を増やしたり、関心を高める解説を工夫したりするなどが考えられます。
(本稿は『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』から一部を抜粋・編集したものです)