わずかな成果から莫大な利益を“不当”に上げてきた「コンサル業界」のビジネスモデルが破綻しようとしている

AI要約

マリアナ・マッツカート教授らは、コンサルティング業界の経済的利益に疑問を投げかけている。

経営コンサルティングの効果について、実際の経験を通じて検証を行っている。

コンサル業界の将来展望や現状について、AIの台頭や新型コロナウイルスの影響を取り上げている。

わずかな成果から莫大な利益を“不当”に上げてきた「コンサル業界」のビジネスモデルが破綻しようとしている

英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのマリアナ・マッツカート教授らは、コンサルティング業界は不当に莫大な経済的利益を得ていると指摘する。それはなぜなのか、英紙「フィナンシャル・タイムズ」が解説する。

私は以前、米国の大手出版社で働いていた。当時は「ドットコム革命」の渦中にあり、読者の減少と収益の低下が課題となっていた。そこで同社幹部は大手経営コンサルティング企業と契約し、何をなすべきか分析を依頼した。

数ヵ月にわたって会議が続き、数100万ドルが支払われた。しかし、そうして提案されたシナリオは明らかに不充分だった。賢者たちによるそのアドバイスに従っても、読者をつなぎとめることも、雑誌を救うこともできなかったのだ。

さらに他の要因もあり、私はずっと経営コンサルティングに対して懐疑的だった。まず「正しく数値化できれば、適切に対応できる」というアプローチでは、たくさんのものが見落とされてしまう。投入コストや株価など、個別に勘定できるものも確かにある。しかし、たとえば文化、忠誠心、創造性といった多くの要素は数字では表しきれない。

また、責任の所在をめぐる問題も生じる。企業は頻繁にコンサルタントを雇うが、課題をうまく解決できなければ、彼らのせいにできてしまう。それに加え、最近ではAIがコンサルタントの基礎的な仕事を次々にこなせるようになっているため、その職業自体が徐々に衰退していくだろう。

この兆候はあちこちに見られる。マッキンゼーやベインといった大手コンサル企業は金銭的なインセンティブを与え、従業員の退職を促している。デロイトやアーンスト・アンド・ヤングなども、コスト削減と組織再編を進めている。コンサル業界の景気はかつて非常に良かったが、いまでは全体にジリ貧という空気が漂っているのだ。

新型コロナウイルスのパンデミック中、コンサル業界は急激に成長した。サプライチェーンにおける問題、リモートワークへの転換、不確実な経済見通しなど、数多くの問題に対応する必要があり、多くの企業が必死で助けを求めていたからだ。しかし、その勢いはもうない。米調査会社ケネディ・インテリジェンスによる調査「コンサルティング業界モニター」によると、2023年の同業界の収益成長率は前年の半分に下がり、5%となった。