<独自>住友ファーマ、iPS細胞製造の新工場を国内建設へ 最大1万人分 木村新社長「新しい輸出産業に」

AI要約

住友ファーマがiPS細胞を用いた再生医療製品の生産を目指す専用工場建設計画を発表。パーキンソン病治療向け製品の開発が焦点。新社長が再生医療を日本の新たな輸出産業と位置付ける考えを示す。

同社は網膜疾患などにもiPS細胞を活用した製品を開発中で、年間売上高1千億円超を目指す。抗精神病薬の特許切れにより経営が悪化した背景を持つものの、再生医療製品には独自技術があり優位性を維持する見通し。

住友ファーマは北米での治療薬の業績回復を急務とし、事業安定化のための取り組みを積極的に進めている。

<独自>住友ファーマ、iPS細胞製造の新工場を国内建設へ 最大1万人分 木村新社長「新しい輸出産業に」

住友ファーマが開発を進める人工多能性幹細胞(iPS細胞)による再生医療向け製品を巡り、年間最大1万人分規模の細胞を培養、生産できる専用工場を国内で建設する方針であることが25日、分かった。同社は今年度中に国内での承認取得を目指すパーキンソン病向け製品などを、市場の大きい米国をはじめ世界で事業展開し、次の成長につなげたい考えだ。

同日付で新社長に就任した木村徹氏(63)が、産経新聞のインタビューに応じて明らかにした。木村氏は「(日本の)新しい輸出産業にしたい」と述べた。

住友ファーマはパーキンソン病と、網膜の病気向けに患者以外から採取したiPS細胞を大量に培養し、必要なタイミングで患者に移植する再生医療向け製品を開発中。パーキンソン病については京都大での臨床試験が完了し、同社は今年9月ごろまでに国への承認申請を目指している。

同社は再生医療分野で令和9年度までに国内で事業を本格化させ、14年度に海外も含め年間売上高1千億円超の事業規模とすることを目指す。すでに大阪府吹田市内にiPS細胞の製造工場を持つが「1万人分規模となると足りず、専用工場が必要」という。新工場は、同工場か三重県鈴鹿市の自社工場、親会社の住友化学の大阪工場(大阪市此花区)などの敷地の活用が選択肢になる。

住友ファーマは収益の柱だった抗精神病薬の米国での特許期間が5年2月に切れ、経営が悪化。6年3月期連結決算では2期連続で純損益が赤字に陥った。木村氏は「再生医療向け製品には多くの独自技術があり、特許切れとなっても他社が同じものをつくるのは難しい。息の長い収益構造を実現できる」と語った。

当面は北米で基幹製品と位置付ける、がんなどの3つの治療薬の業績回復が、経営再建に向けて急務。木村氏は「昨年秋から営業体制などを見直し、今年4、5月は想定よりやや強含みの売上高を達成している」と自信をのぞかせた。

住友化学は住友ファーマへの出資比率51・76%(今年3月末現在)の引き下げも選択肢に入れている。木村氏は「当社の事業をより安定化させるパートナーを考えてくれていると思う」と述べ、株式の売却先によっては前向きにとらえる認識を示した。