EVの逆風で注目高まる「PHEV」がいまひとつメジャーになり切れないのはなぜか?

AI要約

外部電源からの充電が可能なPHEV(プラグインハイブリッドカー)は、短距離では電力で走行可能で、その後は燃料で走行できるクルマの特性を持つが、普及が芳しくない状況が続いている。

PHEVの難しさは、コストが高くなることやバッテリーの重量増が燃費に不利に働くことなどが挙げられ、環境性能の確保にも難しさが見られる。

しかし、実際のPHEVの使用において、どのようなパフォーマンスを示すのかを実際のロードテストを通じて検証されている。

 外部電源からの充電が可能で、バッテリーが切れた後も低燃費で走行可能というプラグインハイブリッドカー。現在は価格の高さから販売台数は限定的だが、今後の技術進化によっては環境ソリューションのメインストリームになる可能性も秘めており、世界のメーカーによる開発競争の激化は必至だ。果たしてどこまで普及するのか──。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がレポートする。

■ ハイブリッドカーよりも普及が早いと予測されていたPHEVだが…

 欧州、北米における行き過ぎたBEV(バッテリー式電気自動車)推しの政策の反動もあってBEVへの逆風が強まる中、クルマのCO2削減ツールとして改めて注目されているのがPHEV(プラグインハイブリッドカー)だ。

 PHEVは外部電源からの充電が可能な大型バッテリーと内燃機関ベースのハイブリッドシステムの両方を備えるクルマのこと。短距離であればBEVと同じようにバッテリーに充電した電力で走行可能で、その後はHEV(ハイブリッドカー)と同じようにガソリンや軽油などの搭載燃料で走行可能――と、BEVとHEVの“良いとこ取り”をした商品特性が売りだ。

 こう聞くといかにも売れそうな気がするPHEVだが、ここまでの販売実績は芳しくない。米国、欧州、日本と、いずれの主要市場もBEVに対して劣位。電動化に最も前のめりな中国においてすらBEVのほうが圧倒的多数である。

 世界初の量産HEV、初代「プリウス」の開発責任者だった内山田竹志・トヨタ自動車前会長は2017年にPHEV「プリウスPHV」の第2世代モデルを発表した時、

 「ハイブリッドカーはわれわれの予測をはるかに上回るペースで普及した。プラグインハイブリッドの普及はそれよりさらに早いと思う」

 と自信を示していた。だが、現時点ではHEVに置き換わるどころか、BEVにも押されている。

■ 「コスト高」「バッテリー重量増」が避けられないPHEV作りの難しさ

 なぜPHEVはいまひとつメジャーになり切れていないのか。それはひとえにクルマ作りの難しさにある。

 まずはコストを下げるのが難しい。動力用バッテリーの容量はBEVに比べると数分の1で済むのだが、それとは別にエンジンや発電機を持たなければならないため、車両価格はおしなべて高い。

 例えばトヨタの高級SUV「レクサスRX」の場合、PHEVはHEVの76万円高、現行プリウスだと実に100万円高である。それでもトヨタの価格差は良心的なほうで、海外メーカーではさらに差が大きいのが一般的だ。

 もうひとつの難しさは環境性能の確保だ。PHEVはエンジン車はもちろん、普通のHEVと比べてもバッテリーが大きいぶん重量がかさむ。車両重量を見るとより大容量のバッテリーを積むBEVと大差ないというケースも多くみられる。重量増は当然燃費に不利に働く。

 EV走行時も低CO2由来の電力でなければCO2削減効果は限定的、エンジンで走る時にはEV走行時に稼いだ抑制ぶんを吐き出してしまうというのでは意味がない。

 そういう難しい商品のPHEVだが、果たして実際に使用してみるとどのようなパフォーマンスを示すのか。筆者は過去、さまざまなPHEVのロードテストを行っている。その中からいくつかの事例を紹介してみよう。