なぜ再燃? 北陸新幹線「米原ルート」 国もJRも“無理”というが… ネックな敦賀乗り換え解消法をマジメに考えてみた

AI要約

北陸新幹線は東京から北陸地域を経由し、最終的には新大阪までを結ぶ計画で、2024年現在では東京~敦賀間が開通しています。今後の敦賀~新大阪間のルート選定には様々な議論があり、建設費や技術的課題などが課題となっています。

北陸新幹線における米原ルートと小浜・京都ルートの選定に関して、両ルートのメリット・デメリットが検討されています。安価で高速化できる米原ルートが注目されつつも、運行管理システムの違いや環境評価手続きなどで課題も多い状況です。

また、新大阪駅の地下に山陽新幹線と直通させる構想も浮上しており、今後の北陸新幹線の展開にはさまざまな課題と可能性があります。

なぜ再燃? 北陸新幹線「米原ルート」 国もJRも“無理”というが… ネックな敦賀乗り換え解消法をマジメに考えてみた

 北陸新幹線は東京から北陸地域を経由し、最終的には新大阪までを結ぶ計画で、2024年現在では東京~敦賀間が開通しています。残りの敦賀~新大阪間については、複数のルート案での議論がなされてきました。

 

 1973(昭和48)年に制定された全国新幹線鉄道整備法では、「小浜市付近を経由し、東京と大阪を結ぶ路線」と定義され、当初は福井県の敦賀から小浜を経由して新大阪を直接結ぶ「小浜ルート」が想定されました。

 その後、北陸中京新幹線の一部となる敦賀~米原間を建設し、米原駅(滋賀県米原市)から新大阪駅までは東海道新幹線に乗り入れる通称「米原ルート」や、JR湖西線に沿って走り、京都~新大阪間だけ東海道新幹線に乗り入れる「湖西ルート」、小浜から舞鶴に迂回し、京都、新大阪を目指す「舞鶴ルート」が検討されました。

 完成後に運営することとなるJR西日本は、1999(平成11)年に当時の南谷社長が「建設費や工事難易度から米原経由が現実的」と発言しましたが、その後本格的なルート選定が進み、2014(平成26)年には当時の真鍋社長が「東海道新幹線と北陸新幹線は運行管理システムが違い、東海道新幹線の過密ダイヤからも直通は非現実的」と、見解を改めています。実際、特に京都~新大阪間は車両基地への回送電車を含めると、4分ごとに新幹線が走り、北陸新幹線を走らせるのは困難だと思われます。

 2015(平成27)年には、JR東海の柘植社長が「ダイヤとして東海道新幹線への乗り入れは困難」と同調。JR西日本は、小浜から京都駅を経由し、そのまま別ルートで新大阪を目指す「小浜・京都ルート」を提案し、翌2016(平成28)年に決定したわけです。

 しかし「小浜・京都ルート」は、歴史的な遺物や地下水も多く存在する京都市内を大深度地下で抜けることへの危惧や、2兆700億円という高額な建設費が課題となっています

 そして2024年。北陸新幹線の金沢~敦賀間が開業し、大阪~金沢間での敦賀駅乗り換えが必要となりました。金沢~敦賀開業時点では当初、新大阪~金沢間は在来線と新幹線で軌間を変換して直通する「フリーゲージトレイン」で運行し、乗り換えなしの想定でしたが、開発は失敗。在来線では高速の特急「サンダーバード」を置き換えたこともあり、時短は大阪~金沢間で最大22分とわずかなうえ、特急料金は1600円高くなったため、「敦賀での現状固定をすぐ解消しろ」という声が高まりました。

 そこで再注目されているのが、建設距離が「小浜・京都ルート」の約143kmに対し約50kmと短い「米原ルート」です。これなら安い建設費で高速化できると、与野党の一部や加賀市長らが決定の見直しを求めているのです。

 ただし「米原ルート」が選定されない理由は複数あります。鉄道・運輸機構は2024年6月に公表した「北陸新幹線(敦賀・新大阪間)のルートに関する議論について」の中で、「北陸新幹線と東海道新幹線は運行管理システムと脱線・逸脱防止装置が異なり、線路容量も逼迫しているので、米原~新大阪間の直通は困難」「所要時間・運賃・料金が小浜・京都ルートより増える」「環境影響評価手続きが新規に必要」としています。加えて、「小浜・京都ルート」を支持し、東海道新幹線新駅設置を否決した滋賀県の同意を得ることも必要なので、早く解決できるかは不明です。

 なお、鉄道・運輸機構は北陸新幹線の新大阪駅を別に地下に設け、山陽新幹線と直通させる構想も示しています。脱線・逸脱防止装置は、北陸新幹線と山陽新幹線は同じです。つまり、JR西日本の路線内となる新大阪地下駅でなら、運行管理システムの車上切り替えをする時間が取れるのかもしれません。