ある日突然、職場の「親切なおばさん」がストーカーに…20代男性が味わった「恐怖体験」

AI要約

相手を見下す、足を引っ張る、自己保身、根性論など様々な態度で職場を腐らせる人たちについての臨床例が語られる。

産業医が抑えがたい問題に直面し、一方的な思い込みや過剰な信念がもたらすトラブルが浮き彫りになる。

職場の人間関係に起因する悩みが多く、腐らせる人物が存在すると職場全体に悪影響が広がるという問題が議論される。

ある日突然、職場の「親切なおばさん」がストーカーに…20代男性が味わった「恐怖体験」

 根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。発売たちまち5刷が決まった話題書『職場を腐らせる人たち』では、ベストセラー著者が豊富な臨床例から明かす。

 自宅に押しかけられた男性との面談の際、産業医が交際の有無について尋ねると、「交際なんかしているわけがない。連絡先さえ教えてない。第一、自分の母親と年齢が近い女性に恋愛感情を抱くわけがないじゃないですか。ただ、親切なおばさんと思っていただけ。お菓子だって、好きでもないけど、断るのも悪いと思って受け取った。側でじっと見つめられると食べないわけにもいかないし」という答えが返ってきた。

 しかも、交際相手とは大学時代からつき合っているという話だったので、40代の女性が「結婚するはず」とか「許嫁」とか主張したのは、思い込みによる可能性が高いと産業医は判断した。そこで、自宅謹慎処分を受けていた女性を呼んで面談したところ、「私は悪くない」の一点張りで、「(20代の男性が)私に好意を抱いていたのは明らかで、結婚も考えていたはず。それなのに、日曜日に若い女と手をつないで歩いているのを見かけたので、裏切られたと思った」と訴えた。

 困り果てた産業医は、私が勤務しているクリニック宛に紹介状を書き、この女性は私の外来を受診した。しかし、最初から「私はこんなところ(精神科)に来るような人間ではありません。会社の上司も産業医も私が悪いと決めつけているけど、私は全然悪くない。私に好意を抱いていたのに、裏切った向こう(20代の男性)が悪い」と主張し、診察を受けること自体に拒否的だった。

 まあまあとなだめて、20代の男性が彼女に好意を抱いていたと考える理由を尋ねたところ、「私に話しかけるときはいつも笑顔だった」「私が作ったお菓子を本当においしそうに食べてくれた」「私と目が合うことが多かった」といった答えが返ってきた。いずれも、20代の男性が彼女に好意を抱いていると判断する根拠としてはきわめて希薄なように思われる。

 経理事務について教えてもらったり、経費請求の書類を提出したりする際、なるべくいい印象を与えようと笑顔で接するのは当然だ。また、先輩がわざわざ作ってきてくれたお菓子をおいしそうに食べないと、機嫌を損ねてしまうかもしれない。だから、この男性なりの処世術のように私の目には映るが、そうは考えられないらしい。

 そもそも、相手から連絡先も教えてもらっていないし、告白もプロポーズもされていないのに、交際さらには結婚にまで発展しうるのかという疑問を私が口にしたところ、「私たちは純愛でプラトニックな関係なんです」という答えが返ってきた。

 男性の自宅の場所がわかった理由について尋ねると、日曜日に男性が若い女性と一緒にいるところを偶然見かけたので、腹が立って跡をつけたと話した。もっとも、この女性が社内のデータベースにアクセスし、男性の個人情報を盗み見た形跡があると、産業医からの紹介状には記載されていた。

 この女性は、20代の男性が自分に好意を抱いているはずと思い込んでいるようだが、客観的な根拠があるとは到底考えられない。第一、当の男性が彼女に対する恋愛感情を否定しており、結婚を前提に大学時代から交際している相手もいるので、この女性の一方的な思い込みである可能性が高い。

 しかも、産業医からの紹介状には、この女性は以前も同じ経理部にいた30代の既婚男性の自宅まで押しかけ、妻に向かって「あんたの旦那が本当に愛しているのは私だから、すぐに別れて」と叫んだことが記載されていた。騒動の後、産業医が双方に事情を聞いたところ、男女の関係はなかったことがわかった。この女性の思い込みがかなり強く、男性と同じ電車で通勤するために遠回りまでしていたことも判明した。何とか穏便にすませようとした上司の配慮で、この既婚男性は妻子を連れて海外の支社に転勤したという。

 つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。