遺産1億円の相続税が1220万円から770万円に下がった…「遺産総額を減らす」だけではない相続税の減らし方

AI要約

相続税の抑え方については、まず現状分析から始める必要がある。

相続税対策は4つのステップを順番に実行することが重要であり、失敗を避けるために慎重にカスタマイズする必要がある。

相続税がどれくらいかかるかを概算し、納税資金を準備することが重要である。

相続税を安く抑えるにはどうすればいいか。税理士の大田貴広さんは「生前贈与や不動産購入にいきなり手を出して失敗する人は多い。まずは相続税がどの程度かかるのか、洗い出すことから始めなければいけない」という――。

 ※本稿は、大田貴広『相続のお金の残し方「裏」教科書 専門税理士が限界ギリギリまで教える“99%節税できて100%モメない”方法』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■相続税対策は4ステップの順番が命

 相続税対策は、次の4つを順番に実行することが大事です。

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(1)現状分析

(2)遺産の分け方を決める

(3)不動産や生命保険の購入による評価額の引き下げ

(4)生前贈与

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 相続税対策は、この4つの順番を守らないとうまくいきません。まず押さえるべきところを押さえてから次のステップへ進まないと、落とし穴にはまる可能性があります。多くの方が、生前贈与や不動産購入という対策を提案されるままに実行します。実をいうと、その対策を鵜呑みにするのは大変危険です。

 これまで実際に相続税申告を担当してきたお客様の中でも、後々になって「この対策はやらないほうが良かった」「かえって税金を数千万円損した」という方が一定数はいます。

 「マンションを買ったのはいいけれど納税資金がなくて相続税を支払えない」「子供のために生前贈与をコツコツ頑張ってきたけれど対策が無駄になった」といった話はめずらしくありません。確かにこれらの一つ一つの対策は間違ってはいませんが、その対策が果たしてあなたに合うかは分からないのです。

 正しい対策をするためには、(1)現状分析、(2)遺産の分け方を決める、(3)不動産や生命保険の購入による評価額の引き下げ、(4)生前贈与を順に実行し、その人ごとにカスタマイズする必要があります。

■納税額はどの程度になるか、まずは概算してみる

 現状分析では、「相続税がどれくらいかかるかを知り、納税資金の準備をすること」が重要です。相続税の現状分析はよく健康診断に例えられます。相続税対策のための現状分析は現状の問題点を洗い出すという意味で、健康診断に近いと言えるでしょう。

 現状分析もせずに、営業マンから不動産投資を提案されるのは、健康診断もしていないのに「ではひとまず脳を手術してみましょうか」といきなり医者から言われるようなものです。

 まず相続税の概算を知り、納税資金がどれくらい必要なのかが分かれば、手元にどれくらいお金を残しておけばいいかが分かるので、不必要な対策をせずに済むのです。

 相続税がどれくらいかかるかを知り、納税資金の準備をするためには計算の流れを掴みましょう。相続税と聞くと「どれくらいかかるか不安だな」という怖いイメージを持たれるかもしれませんが、蓋を開けてみると「意外とこの程度か」と思うことも少なくありません。

 ここでは、遺産が1億円で配偶者と子供2人の家族を相続人に持つ方を例に、計算の流れを確認してみましょう。流れは5つのステップで見ていきます(図表1)。

 ステップ1 遺産から相続税の基礎控除を差し引く

 相続税の基礎控除は、3000万円+600万円×法定相続人の数です。この家族の場合、配偶者と子供2人で相続人は3人なので3000万円+600万円×3人で基礎控除は4800万円です。

 もし遺産が基礎控除以下であれば相続税はかかりませんが、この家族の場合は遺産が1億円あり基礎控除の4800万円を上回るため相続税がかかります。1億円から4800万円を差し引くと5200万円です。この5200万円のことを課税遺産総額といいます。

 ステップ2 法定相続分で割り振る

 次に、課税遺産総額を各相続人に法定相続分で割り振ります。いきなり相続税の税率を乗じるのではなく、5200万円を仮に法定相続分で相続したものとみなして金額を割り振るのです。

 法定相続分は、配偶者が1/2、子供が1/4ずつです。よって5200万円は配偶者2600万円(5200万円×1/2)と、子供2人1300万円(5200万円×1/4)ずつに割り振られます。