2025年、東京の空室率は「6%超」になる…オフィス街にこれから「起きること」

AI要約

未来の年表シリーズの『未来のドリル』が日本の少子化の実態を描き出し、テレワークがオフィスの未来に与える影響を解説。

テレワークに対応した企業がオフィス面積を縮小し、新築ビルへの移転などに注力。人員増加にも関わらず、オフィス面積が拡大しない可能性あり。

空室率の上昇を予想される要因として、ソーシャルディスタンスの定着や新規ビルの供給量の増加が挙げられ、将来の需給バランスに影響を与える見通し。

2025年、東京の空室率は「6%超」になる…オフィス街にこれから「起きること」

 人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。

 100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来のドリル』は、コロナ禍が加速させた日本の少子化の実態をありありと描き出している。この国の「社会の老化」はこんなにも進んでいた……。

 ※本記事は『未来のドリル』から抜粋・編集したものです。また、本書は2021年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。

 オフィスの未来はテレワークの動向が大きく左右することになる。ここまでテレワークに積極的に取り組んできた企業が、コロナ前の働き方に完全に戻ることは考えにくい。サテライトオフィスを整備するなどのかなりの投資をしてきたからだ。テレワークに合わせた人事評価システムに変える動きも相次いでいる。

 2020年4~5月にかけての最初の緊急事態宣言の発出時にはガラガラであった通勤電車に通勤客が戻ってきてはいるが、コロナ前の水準まで回復したわけではない。週に2~3回しか通勤しないという人は確実に増えており、地方や別荘に居住しながら仕事をし、必要に応じて東京の本社に出勤するというスタイルに変わった人も珍しくない。オフィス面積縮小の流れは当分続くと見ておいたほうがよい。

 だからといって、テレワークに積極的に取り組む企業が「オフィス不要論」を唱えているわけでも、通勤や対面を軽視しているわけでもない。先の国交省のアンケート調査でも、オフィス縮小に伴う課題については「社員間の交流空間を確保することが必要」が43%と最多であった。多くの企業が対話を重視しているということだ。

 感染収束後も出社の重要性は変わらないだろう。テレワークでは効率的にできない仕事は、どの企業にもある。リモートではコミュニケーションギャップが起こりやすく、人事管理や社員教育はうまく進まない部分が残る。優秀な人材を獲得するには給与面だけでなく、労働環境としての「オフィス」を充実させることが重要だという認識も広がりつつある。

 景気回復に伴う新規採用や先端IT人材などを確保するために、よりハイスペックで立地にも恵まれ、しっかりした耐震構造となっている新築ビルへと移転する企業が増えることだろう。先述したように、アフターコロナの時代となれば、これまで以上にオフィスへの出社とテレワークとを上手に併用する働き方が普及・定着すると見られる。

 それはすなわち、コロナ不況から脱し、各社が人員増加を図ったとしても、人数に比例して必要となるはずのオフィス面積が拡大しないということである。

 一方で、コロナ禍がもたらした新たなオフィス需要もある。ソーシャルディスタンスの定着だ。感染が収束しても、人と人との距離を取る習慣は簡単にはなくならないだろう。従業員や顧客への「配慮」「気遣い」がニューノーマルとなり、求め続けられるようになる。この結果、1人当たりが必要とするオフィス面積や顧客用のスペースの拡大が図られたら、空室率はある程度は下がることとなろう。

 テレワークの動向以上に、空室率の上昇にインパクトを与えそうなのが新規供給の多さだ。2020年も大量供給が空室率上昇をアシストしたことは先述した通りだが、今後はさらに新築ビルが増えそうなのである。再開発は大規模になるほど長期計画で進んでいくため、需要が縮小することは分かっていても簡単にはストップできない。

 三井住友トラスト基礎研究所の見通しでは、新規ビル供給は2021~2022年はいったん抑制されるものの、2023年以降は再拡大する。三井住友信託銀行の資料によれば、2021~2025年の新規供給量は2020年末のストック比で、東京10・9%増、大阪9・9%増、福岡9・2%増、横浜9・0%増などとなる。

 数年で1割も増えたのではよほど借り手が増えない限り、需給バランスは大きく崩れる。空室率は高止まりどころか、さらに上昇していくだろう。三井住友信託銀行の推計では、東京、横浜、大阪については2025年の空室率が6%を超えるとしている。