政府の「骨太」原案、2024年問題受け人手不足対策 自動運転後押し

AI要約

政府の経済財政諮問会議で示された経済財政運営の指針「骨太の方針」原案では、人手不足への対応が重要な柱となっている。残業規制強化による交通・物流分野の深刻な人手不足やサービス低下への懸念が示され、デジタルトランスフォーメーションや新技術の活用が重要視されている。

自動運転の推進が特筆されており、全国での自動運転車両の実証運行計画や無人運転バスの導入を通じた地域交通の支援が示されている。また、物流の停滞を考慮し、高速道路料金体系の見直しも検討されている。

一般ドライバーが有償で乗客を送迎する「ライドシェア」の導入やDX人材の育成・確保の重要性が強調されており、交通・物流分野における人手不足対策に取り組む姿勢が示されている。

政府の経済財政諮問会議で11日示された経済財政運営の指針「骨太の方針」原案では、人手不足への対応が大きな柱となった。4月からの残業規制の強化によって、交通・物流分野では人手不足が深刻化してサービスが低下する「2024(令和6)年問題」が懸念されている。政府はデジタルトランスフォーメーション(DX)や新技術の社会実装を後押しし、交通や物流が停滞しないようにしたい考えだ。

「人手不足への対応としてデジタル化や省力化投資の取り組みを支援する」。原案は人口減少などが見込まれる中で、DXの活用が企業の稼ぐ力を維持するカギを握ると強調した。

その代表格が自動運転だ。自動運転車両の実証運行を24(6)年度に全国の一般道100カ所以上、25(7)年度には全都道府県で実施する方針を明記した。全国的な普及に向け、まず地域住民らの足となる無人運転バスの導入を想定しており、補助金や事前審査の期間短縮で自治体を支援する。

4月からの残業規制強化の影響はすでにバス業界で出ている。近畿日本ツーリストでは5月に東京都の中学校の修学旅行で貸切バスを手配できない事態が発生。横浜市交通局は4月1日に全体の3・1%にあたる290便を減便。同月22日にも77便を減便した。

日本バス協会は運転手が24(6)年に2万1千人、30(12)年に3万6千人不足すると試算。運転手不足解消につながる自動運転の社会実装が急務になっている。

また、人手不足による物流停滞を見据え、高速道路の料金体系を見直し、25(7)年度から渋滞時に料金を高くするなど変動制に転換する方針なども盛り込んだ。

一方、全国で顕在化する移動の足不足への対策として、一般ドライバーが有償で乗客を送迎する「ライドシェア」を中核に位置付けた。4月にタクシー事業者の管理の下、都市部や観光地など限定で制度を始めた、全国に広げる方針だ。

東京都市大学の西山敏樹准教授は「DXで交通・物流分野での人手不足対策に取り組む流れは良い」と評価しつつ、「DXを担う人材の育成や確保といった中長期的な視点がさらに必要になる」と指摘する。(万福博之)