東電、柏崎刈羽原発の夏の再稼働を先送りへ 能登半島地震で安全対策の議論が再燃

AI要約

東京電力柏崎刈羽原発7号機の再稼働が秋以降にずれ込む見通しとなった。地元の安全対策に関する議論が長引き、再稼働時期が曖昧なままとなっている。

能登半島地震の影響もあり、新潟県の再稼働に対する態度が厳しくなっている。国や東電も再稼働を急ぐ姿勢を見せていたが、地元の合意が得られず遅れが生じている。

安全対策の議論や県の判断基準確立の遅れから、再稼働の時期は来年か再来年になる可能性が高いとみられている。

東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)7号機の再稼働が、秋以降にずれ込む見通しとなった。国や東電は水面下で夏の再稼働を模索してきたが、能登半島地震の発生もあり、早期に地元同意を取り付ける見通しが立たなくなった。平成23年に停止した7号機の再稼働は東電の経営再建計画の重要な柱で、脱炭素電源の安定確保を目指す国のエネルギー政策にも影響するが、議論は紛糾し、長期化する恐れもある。

■長引く安全対策の議論

福島第1原発事故後、原発の再稼働に向け地元の合意を得る手続きは立地自治体の議会や県議会で行われてきた。東電も前例に倣い、6月の県議会での同意を得た上で、今夏の再稼働を視野に入れていた。4月の時点で原子炉に核燃料を運び込む作業も完了していた。

しかし、元日に発生した能登半島地震を受け、安全対策をめぐる議論が再燃。新潟県議会は3月、原発事故時の避難方法の見直しなどを政府に求める意見書を全会一致で可決した。

国の原子力規制委員会は4月に原子力災害対策指針の見直しに向けた検討チームの初会合を開催。今月には事故が起こった場合の避難路整備について国が費用の全額を負担する方針が新潟県側に伝えられた。だが、安全対策をめぐる議論は長引いており、結論が出ていない。

■「再稼働は来年か再来年」

こうした中、新潟県の花角英世知事が再稼働の是非を判断する重要な基準と位置付ける、県独自の「新潟県技術委員会」は今月4日、原発の安全対策など重要項目のうち、確認が終わった項目を整理して報告書を取りまとめる方針を示した。

ただ、報告書をとりまとめる期限や安全性の評価方法などは示されていない。6月の県議会に判断材料の一つである報告書が間に合わない見込みとなったことで、再稼働の同意に向けた請願などは採択されない見通しだ。県議会最大会派の自民党県議の1人は「安全確保の議論は進んでいない。再稼働は来年か再来年ではないか」との見通しを示した。

東京電力ホールディングスの小早川智明社長は4月の会見で「1日も早く再稼働できることが望ましい」としたが、「安全性について地元の皆さまからのご理解があることが大前提」として時期の明言を避けている。(織田淳嗣)