座席の選択肢は普通のクルマの比じゃない! バスの「乗り心地による特等席」はドコかを考えてみた

AI要約

バスの乗り心地のよい席の特徴について解説。

バスの車体の構造や重量配分から中央後ろ寄りの座席が乗り心地に最適である理由。

乗客数やタイヤの位置などの影響も考慮すると、最適な座席が存在しづらいこと。

座席の選択肢は普通のクルマの比じゃない! バスの「乗り心地による特等席」はドコかを考えてみた

 日々の足として利用する乗合バス、旅行などで利用する観光バス、安価に遠出するときに役立つ高速バス……などなど公共交通機関として、もはやバスは欠かせない存在となっている。

 それだけ身近なモビリティではあるが、バスに乗るときに「もっとも乗り心地のよい席はどこなのか」といったことを考えたことはだろうか。実際問題としては、座席予約のできる高速バスでなければ座る場所を選ぶことはできないともいえるが、少々まじめに考えてみよう。

 まず、自動車の乗り心地というものは何に由来しているかを整理する必要がある。

 乗用車同士で乗り心地を比較するとき、おそらく多くの人がボディ剛性感やサスペンション、タイヤの性能によって乗員が体で感じる突き上げが異なる点や遮音性能などに由来する静粛性によって評価しているだろう。

 難しいのは、路面の凸凹をマイルドに受けとめるようサスペンションを柔らかくしすぎると、コーナリングでのロールや加減速でのピッチングといった前後左右の動きが大きくなってしまい、それが不快感を生んでしまうという点だ。そうしたバランスをどう取るかが、自動車エンジニアの実力ともいえる。

 このあたりの感覚は個人差もあるだろうから、定量化するのは難しい面もあるが、おそらく多くのユーザーは、路面や挙動の変化による上下動がマイルドなほど乗り心地がよいと感じているはずだ。つまり、単純化すると「クルマの挙動によって乗員のカラダが強制的に動かされる」程度によって乗り心地のよし悪しを判断していると考えられる。

 この前提において、バスに乗るときの『もっとも乗り心地のよい席は、中央付近の後ろ寄り』といえる。

 バスは重量配分がリヤ寄りなので無駄な上下動を感じずらい

 ご存知のように、日本国内で走っている多くのバス(マイクロバス除く)は、用途にかかわらずリヤに巨大なエンジンを積んだRR(リヤエンジン・リヤ駆動)レイアウトとなっていることがほとんどだ。そのため空車での前後重量配分は、おおよそ3:7となっている。

 バスの車体をシーソーのようにとらえ、この重量配分から考えられる支点あたりに座っていれば、加減速による上下動の影響がもっとも少ないといえる。おおよそのイメージでいうと、前後タイヤの中心地点から、中間地点より後ろ寄りのところに乗り心地のよいポイントがくることになる。その場所で、なおかつ横方向にも中央付近に座っていれば、左右の動きからの影響を最小限にすることが期待できる。

 もっとも、前後にドアがあるような乗合バスでは車体中央付近に座席があることは少ない。観光バスや高速バスなどでも中央は通路になっているため、物理的なベストポジションに座席はない、というのが現実なのかもしれない。

 さらにいえば、前述した前後重量配分は空車時のものであり、乗客が多いような状況での前後バランスは変わってくる。加えて、タイヤに近い場所は振動やノイズも大きくなるため重量配分だけで考えるのが難しい面もある。

 とはいえ、前後のオーバーハング(タイヤ軸より前後にはみ出した部分)に座っているのはピッチングの影響が大きくなるため、そこに乗り心地のよいポジションがくるということは考えづらい。

 遠足などで、バスの最後端に座りたがる子どもは多いのかもしれないが、乗り心地的にはけっして特等席とはいえないのだ。

 また、クルマ酔いしないようバスの最前列に座りたがる人もいる。たしかにフロントウインドウに近いほど景色がよく見えるし、運転手の操作から次にくる挙動に身構えやすいのかもしれないが、フロントタイヤの前というのはやはりピッチングの影響が大きくなりがちなので、乗り心地の点においてはベストチョイスとはいえなさそうだ。