食べた人も漁をする人もニッコリの「恵比寿顔」 1000個のたこつぼを引き上げるゑべすだこ漁に密着【長崎発】

AI要約

大瀬戸町でとれる「タコ」に注目。伝統のたこつぼ漁には、海の資源を無駄にしないという漁師の思いがある。

ゑべすだこの産地、西海市大瀬戸町の福島漁港ではタコつぼ漁が盛んであり、漁師たちが励んでいる。

五島灘でとれる大瀬戸自慢の「ゑべすだこ」。潮の流れが速く、人々の笑顔を生み出す海の恵みである。

食べた人も漁をする人もニッコリの「恵比寿顔」 1000個のたこつぼを引き上げるゑべすだこ漁に密着【長崎発】

海と向きあう漁師の姿を追うシリーズ「海と生きる」。今回は西海市大瀬戸町でとれる「タコ」に注目。伝統のたこつぼ漁には、海の資源を無駄にしないという漁師の思いがあった。

ゆでたての「ゑべすだこ(えべすだこ)」。肉厚で歯応えが良く食べると思わず笑顔になるほどおいしいと言われている。ゑべすだこの産地、西海市大瀬戸町の福島漁港では、昔からたこつぼ漁が盛んで現在15人が励んでいる(2024年5月現在)。

大瀬戸町漁協のブランド「ゑべすだこ」の漁は4月から9月まで行われていて6月に最盛期を迎える。

大瀬戸町漁協 宮崎祐輔さん:漁場とされている五島灘が潮の流れが速く、えさも豊富なので身の引き締まりがあって本当においしいので笑顔になる

「ゑべすだこ」のブランド名は、港を見守る漁業の神・恵比寿(えびす)様から付けられた。

朝6時半。1週間ぶりのたこつぼの引き上げに漁師歴50年のベテランの柳本正行さん(65)は期待に胸をふくらませていた。

KTN記者:今日は風もなく、いい天気。福島漁港から約5kmの所に炭鉱の島だった池島がある。その隣には沖ノ島があり、その近辺がたこつぼの漁場

出港して40分ほどで漁場の五島灘に到着する。たこつぼを沈めている目印の浮きを引き上げる。たこつぼ漁はタコが岩に隠れる習性を利用している。

1000個のたこつぼが深さ60メートルの海底に沈められている。つぼにはフタがついていてタコが入ると閉まる仕掛けになっている。フタが開いていればタコは入っていないことを意味するので、そのまま海に戻す。入っているか、いないか、一瞬で判断しなければならない。

たこつぼを引き上げた柳元さんが、何やらすき間から液体を注入した。「濃度の高い塩水」を代々使っていて、これをかけるとタコがビックリしてつぼから出てくるという。

中から出てきたのは3kgほどの大物だ。柳本さんも思わず恵比寿顔。たこつぼ1000個を引き上げるのに3時間もかかった。

タコが入っていたにも関わらず、タコを海に戻す柳本さん。

ーーなぜ海に戻したのか?

柳本正行さん(65):小さいタコは放流する。規格外で小さいから逃がした

フタが付いた四角いつぼと丸いつぼがあって、漁場によって使い分けている。

柳本正行さん(65):乱獲しないように、丸つぼはフタが無いのでタコが出たり入ったり出来る。ふた付きの角つぼは入れば出られない。乱獲を防ぐため丸つぼの数を多くしている

次の漁場では丸つぼ700個を引き上げる。入っているかどうかはつぼが海面から出た時に「しぶきがある=タコがいる、しぶきがない=タコがいない」ことがわかる。丸つぼはタコが出入りが出来る分、角つぼよりも獲れ高は減るが豊かな海を守るため、漁師たちで取り決めたのだという。

タコの水揚げは年々減っている。大瀬戸町漁協では2016年に年間約100トンの水揚げがあったが2023年は約40トンと半分以下に激減。温暖化で生態系が変わりエサが減っているためではないかと言われているが、原因の特定には至っていない。

柳本正行さん(65):2023年と2022年、2年だめだった。2024年はみんな期待はしているけど出足的には一番悪い

2024年こそはタコの豊漁をー。柳本さんは願い込めて海に向かって「恵比寿さん!」と大きな声で呼びかけた。

そして6時間の漁を終え港に戻る。この日の水揚げは26匹、44kgだった。1kg約1500円で買い取られる。

大瀬戸町漁協が製造している冷凍のゑべすだこも人気で、西海市の直売所(ふれあいの里 清水)やインターネットで買うことができる。

潮の流れが速い五島灘でとれる大瀬戸自慢の「ゑべすだこ」。とる人も食べる人も笑顔になれる海の恵みだ。

(テレビ長崎)