英ロイヤルメール、チェコの大富豪が買収へ 7100億円規模の提案受け入れ

AI要約

英国の郵便事業会社ロイヤルメールが、チェコの大富豪ダニエル・クシェティンスキー氏からの買収提案を受け入れることになった。提案額は35億7000万ポンドで、外国人オーナーへの売却が初めて実現する見通し。

買収によりロイヤルメールの従業員や国内インフラに影響が及ぶ可能性があり、提案条件や将来予定も検討されている。

クシェティンスキー氏はロイヤルメールの市場変化に対応する企業刷新の必要性を強調し、買収によって競争力を強化したいと述べている。

英ロイヤルメール、チェコの大富豪が買収へ 7100億円規模の提案受け入れ

ロンドン(CNN) 英国の郵便事業会社ロイヤルメールを所有する企業は29日、チェコの大富豪ダニエル・クシェティンスキー氏からの買収提案を受け入れたと明らかにした。このまま手続きが進めば英国で最も古く、国を代表する機関の一つであるロイヤルメールが初めて外国人オーナーへ売却されることになる。

ロイヤルメールを所有するインターナショナル・ディストリビューション・サービシズ(IDS)は、クシェティンスキー氏が率いるEPグループからの35億7000万ポンド(約7100億円)規模の買収提案を受け入れたと発表した。1株当たり3.7ポンドでの買収提案となる。

買収はロイヤルメールの従業員数千人に影響を及ぼす。また重要な国内インフラの将来に対する懸念の声も噴出している。

EPグループは、手紙の配達を週6日、全国一律料金で行う従来のサービスは継続すると約束。従業員の福祉手当や年金も維持するとした。さらにロイヤルメールの本社や納税地は英国内から移さないとも明言した。

クシェティンスキー氏はIDSについて、「欧州最大の郵便事業グループの一つ」になる潜在力を有しながらも、その「市場は急速に進化している」と指摘。競合に対抗するため、企業としての刷新が不可欠だとの見方を示した。

ロイヤルメールは2013年に民営化されたが、以降サービス需要の急減に見舞われ、今年3月末までの1年間で3億4800万ポンドの赤字を計上した。前年の赤字額は4億1900万ポンドだった。

7月4日に英国での総選挙を控える中、クシェティンスキー氏による買収提案は政治的にも微妙なタイミングで行われている。提案は国家安全保障の観点から審査を受けることになるが、場合によっては新政権がこれを担当するかもしれない。

世論調査の示唆するところによれば、総選挙は野党・労働党が05年以来の勝利を収め、保守党政権に取って代わるとみられている。

クシェティンスキー氏は欧州各地の複数のエネルギー企業、小売企業、サッカークラブなどの所有を通じて富を築いた。ブルームバーグの「ビリオネア(億万長者)インデックス」によると、個人資産は推定77億ドル(約1兆2100億円)。英イングランド・プレミアリーグのウェストハム・ユナイテッドFCの株を27%所有していることでも知られる。