「現代のネロ帝」...モディの圧力でインドのジャーナリズムは風前の灯火に

AI要約

インドのメディアがモディ首相に批判的なインタビューを行わない状況について述べられている。

モディ首相が首相を取材した際の対応やその後についてのエピソードが紹介されている。

インドのメディアが政権に迎合し、真実を伝える本物のジャーナリズムが損なわれている状況について憂慮されている。

「現代のネロ帝」...モディの圧力でインドのジャーナリズムは風前の灯火に

「インドのような民主主義が前進できるのは、監視機能が作用しているからこそだ」

4月に総選挙の投票が始まる直前、インドのナレンドラ・モディ首相はニューズウィークのインタビューでこう述べた。「この点でインドのメディアは重要な役割を果たしている」し、「インドで報道の自由が損なわれているとの主張」は「疑わしい」とも語った。【アムリタ・シン(キャラバン誌編集者、ジャーナリスト)】

記事はインタビューというより、モディのプレスリリースに近い。まずマニプール州の紛争には一言も触れていない。昨年5月以来、同州では部族間の紛争が激化し200人超の死者が出ているが、モディ政権は事態を沈静化できていない。

また、イスラム教徒が多数派のジャム・カシミール州についてモディは明るい見方を示したが、政権がこの地域で市民の自由を抑圧していることは広く知られている。

イスラム教徒への暴力がたびたび報告されているのに、宗教的少数派は「幸福に暮らし繁栄している」とモディは述べ、取材班も異議を唱えなかった。

10年来、モディと記者のやりとりは変わらない。メディアは首相の言うなりで、彼が報道を通じて「繁栄著しい民主主義国家の指導者」のイメージを打ち出すのを静観する。

野党が弱く、モディがトップダウン型の情報伝達を好むことから、彼が国民の前で責任を問われる機会はこうしたインタビュー以外にない。

それでも記者は無批判な姿勢を取る。重要な問題には切り込まずにモディとその政策を賛美し、攻撃的な愛国心をあおる。インド事情に詳しくない人はモディの言葉こそが真実で、彼は常に国益を最優先に考えているという印象を受けるだろう。

地盤を守りヒンドゥー国家を築くというヒンドゥー教右派の目標にかなうメディアのみが望ましいとの見方を、モディはあらわにしてきた。

タイムズ・ナウやリパブリックTVといった主流メディアはそんなモディに迎合し、政権に疑問を呈するジャーナリストは弾圧される。プロパガンダが奨励され、本物のジャーナリズムが悪者扱いされるのは、民主主義にとって憂慮すべき傾向だ。

ベテランジャーナリストのカラン・タパルは2007年にニュース専門局CNN-IBN(現CNN-ニュース18)でモディを取材した際、まず02年にグジャラート州で起きた反イスラム暴動について尋ねた。

当時同州の首相だったモディがイスラム教徒の虐殺に遺憾の意を示さなかった理由を問い、蛮行に目をつぶった彼を最高裁判所が「現代のネロ皇帝」と呼んだことに触れた。するとモディは、全国放送のインタビューを4分で打ち切った。

この一件の余波をタパルは回想録につづっている。14年の総選挙を前に首相候補のモディにメディア対応を学ばせようと、参謀はこのインタビュー映像を30回も見せたという。そして、モディの首相就任と同時に与党インド人民党(BJP)はタパルを冷遇するようになった。