米FRBが大幅利下げを発表、4年半ぶり

AI要約

アメリカの中央銀行であるFRBが0.5パーセントポイントの利下げを発表し、政策金利の誘導目標を4.75~5%とした。

FRBは市場予想を上回る利下げを実施し、物価上昇や労働市場の懸念も考慮している。

アメリカ経済はインフレ率が低下し、失業率が上昇している中、FRBは借り入れコストを下げる新しい金融政策を始動した。

米FRBが大幅利下げを発表、4年半ぶり

ナタリー・シャーマン、BBCニュース

アメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は18日、0.5パーセントポイントの利下げを発表した。政策金利の引き下げは4年半ぶりで、下げ幅も通常より大きいものとなった。

これにより、アメリカの政策金利の誘導目標は4.75~5%となる。

アメリカの政策金利はこれまで、過去20年で最高水準だった。そのため、今回の引き下げはアメリカの債務者が一息をつける材料となる。

0.5パーセントポイントという下げ幅は、市場予想を大きく上回るものだった。FRBは、年内に主要金利がさらに0.5パーセントポイント下がるとみている。

FRBのジェローム・パウエル議長は、今回の動きは「力強い」ものだと述べた一方、物価上昇や労働市場での懸念が高まる中で必要な措置だったと説明した。

また、インフレ対策として導入された高い借り入れコストが、アメリカ経済に打撃を与えないようにするためだと述べた。

「労働市場は力強い状態にある。我々はそれを維持したい。そのために対応している」と、パウエル議長は話した。

■先手を打つ動き

FRBの動きは、欧州やイギリス、カナダをなど各国の中央銀行による引き下げに続くもので、金利引き下げは広く予想されていた。

しかし金融政策決定会合に先立ち、FRBがどの程度の引き下げを認めるかについては、異例の不透明感があった。

イギリスの投資サービス「ウェルス・クラブ」の投資マネジャー、アイザック・ステル氏は「目立った経済的苦境がないにもかかわらず、政策決定者は先手を打つことにした」のだと説明した。

「FRBがこのような大胆な行動に出るのは、何を見越してのことなのかと、大勢が疑問に思うかもしれない」

FRBは、2022年から金利を大幅に引き上げている。景気を落ち着かせ、1980年代以降で最も速いペースで高騰していた物価を安定させるのが目的だった。

この動きは、支出の抑制によって、物価上昇圧力を緩和することを意図していた。その影響は、住宅ローンや自動車ローンなど借金の増額という形で一般消費者に波及した。

しかし、物価上昇率を意味するインフレ率が沈静化するにつれ、政府高官は高金利が経済全体に及ぼすリスクへの懸念を強めていた。

アメリカでは雇用が減速し、失業率は年初の3.7%から4.2%に上昇した。

会合後に発表された経済見通しによると、インフレ率の低下と失業率の上昇は6月時点よりも加速しており、2024年末には失業率が4.4%に達すると予想されている。

パウエル議長は、昨年は雇用市場が過熱しすぎたため、多少の冷え込みは歓迎するとしながらも、FRBが深刻な景気減速の始まりを懸念しているという見方は否定した。

「景気後退の可能性拡大を示唆するようなものは、今のところ何も見当たらない」と、パウエル氏は述べた。

米商務省の最新統計によると、今年6月までの3カ月間でアメリカ経済は年率3%の成長を記録した。小売支出も底堅く推移している。

一方、インフレ率は8月に2.5%まで下がり、5カ月連続でFRBの目標値2%に近づいた。

今回の金融政策決定会合では、ミシェル・ボウマン委員が2005年以来初めて反対票を投じた。

過去にFRBが0.5パーセントポイントの利下げを発表したのは、新型コロナウイルスのパンデミックや2008年の金融危機といった、経済リスクが高まった時だった。

米シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスの教授で、FRB元委員のランダル・クロズナー氏は、今回の利下げ発表で重要な点は下げ幅ではなく、借り入れコスト低下という新しい時期が始まることだと指摘した。

「増減0.25ポイント程度の変化で、アメリカ経済が破綻することはない」

「年内、そして中期的、長期的に見た場合、アメリカ経済がどこに向かっているのかが大事だ」

FRBは2023年7月以来、主要金利(銀行が借り入れにかける手数料)を据え置いてきた。

FRB発表の予測によると、主要貸出金利は年末までに約4.4%、2025年末までには3.4%まで低下する見通し。これは、6月時点で広く予測されていた金利よりも大幅に低い。

■「大きな違い」

米ペンシルヴェニア州で飲食店を経営するジェニファー・ヒーズリーさんは、2年前に事業拡大のためにクレジットカードを使った後、FRBが動くのを首を長くして待っていたと話した。

「金利が上がったので、毎月の支払額がものすごく増えた」とヒーズリーさんは言い、信販会社によっては金利が21%にもなるクレジットカードもあると述べた。

「1500ドルの機材を購入して、代金をクレジットカードで支払った場合、もし速やかに返済していないなら、かなりの利子が積み上がることになる」

「私にとっては、金利が下がり始めることは大きな違いだ」

米株式市場では、ダウ工業株30種平均やS&P500種、ナスダックがFRBの発表後に急騰したが、この日は小幅安で終わった。

(英語記事 US goes big with first interest rate cut in four years