ハリス氏、攻勢貫き主導権 トランプ氏、失言は回避 激戦の行方、依然不明・米大統領選討論会〔深層探訪〕

AI要約

10日に行われたハリス米副大統領とトランプ前大統領による初のテレビ討論会では、ハリス氏が攻勢を貫き、主導権を握った。トランプ氏は挑発に反応してペースを崩すも、懸念された失言はなかった。

ハリス氏は冒頭から攻撃的な姿勢を示し、トランプ氏を挑発。トランプ氏は反論に追われ、争点で明確な姿勢を示せなかった。ハリス氏が終始先手を取り、支持を集めた。

討論会の結果が投票行動に大きな影響を与えない状況で、両陣営は激戦州を巡る戦いに向けて準備を進めている。

ハリス氏、攻勢貫き主導権 トランプ氏、失言は回避 激戦の行方、依然不明・米大統領選討論会〔深層探訪〕

 10日に行われたハリス米副大統領(59)とトランプ前大統領(78)による初のテレビ討論会で、ハリス氏は終始攻勢を貫き、主導権を握った。対するトランプ氏は挑発に反応してペースを崩したが、懸念された人種問題を巡る失言などはなかった。事後の世論調査では討論会が「投票先に影響しない」とする回答がおよそ8割を占め、激戦の行方を決定付けるには至っていない。

 ◇挑発で先制

 ハリス氏は会場に入るとトランプ氏に歩み寄り、にこやかに握手を求めた。しかし友好ムードは討論会が始まると一変した。

 「ドナルド・トランプは(経済政策で)何のプランも持っていない」「彼の演説集会はつまらないから聴衆がすぐ帰る」。ハリス氏は冒頭からトランプ氏を刺激する発言を繰り出した。いら立つトランプ氏は「私は名門校を出たし、素晴らしいプランを持っている」「私の集会から去る人はいない」と一つ一つ反論。経済や移民問題で追及に割くはずの時間を浪費した。

 トランプ氏は、争点の一つである人工妊娠中絶を巡っても明確な姿勢を示せなかった。米メディアは「ハリス氏はトランプ氏の神経を逆なでし、守勢に追い込んだ」(政治専門紙ポリティコ)などと論評し、ハリス氏に軍配を上げた。討論会終了後には、人気歌手テイラー・スウィフトさんがハリス氏への支持を表明し、さらなる追い風になった。

 ◇浮動票争奪変わらず

 高齢不安から撤退を強いられたバイデン大統領(81)に代わり8月に参戦したハリス氏は、刷新感から「旋風」を巻き起こし、全米支持率でトランプ氏を一時上回った。9月に入り勢いは鈍化し、支持率は伯仲しているが、討論会で果敢に戦う姿勢を示して支持層の熱を維持する目的は達した。

 ただ、ハリス氏は質問への回答をトランプ氏批判にすり替える姿も目立った。トランプ氏からの「彼女はあれをする、これをすると言うが(政権)3年半でなぜ実施しなかったのか」という批判にも、正面から向き合おうとしなかった。

 一方、トランプ氏は個人攻撃を控え、民主党が「司法を武器化した」と改めて主張。「彼らの発言のせいで私が銃弾を受けた」と述べた。既存政治に怒りを募らせる岩盤支持層へのアピールを狙ったとみられる。

 「勝利」に自信を覚えたハリス氏陣営は、早くもX(旧ツイッター)で「副大統領は第2回討論会の準備ができている」と表明。トランプ氏は「公平な放送局なら」と留保している。

 CNNテレビの調査では、討論会後に「投票先を変えた」と回答したのはトランプ氏支持者で6%、ハリス氏支持者では2%にとどまった。有権者全体の1~2割ほどの浮動票が勝負を分ける状況に変わりはなく、両氏は今週、激戦州へとそれぞれ繰り出す。(フィラデルフィア=米ペンシルベニア州=時事)