超党派「日中議員連盟」では問題を解決できない…!訪中した議員団が「習近平主席に会えなくて当然」の理由

AI要約

超党派「日中議員連盟」が北京訪問した際の成果期待は誤解だった。

不断の歴史誤解と未解決の問題が日中関係に影響を与えている。

最近の日中の葛藤は経済関連や日米同盟の影響も受けている。

超党派「日中議員連盟」では問題を解決できない…!訪中した議員団が「習近平主席に会えなくて当然」の理由

去る8月27日から29日まで、超党派「日中議員連盟」は北京を訪問した。5年ぶりの訪問で何等かの成果を得られるのではないかと期待されていた。しかし、こういう超党派議員連盟の訪中で成果を得られる期待そのものは間違っている。訪中団は友情を温めることができるかもしれないが、日中の間に山積するたくさんの問題を解決できるとは思えない。

むろん、友情を温めるのも外交の重要な一貫である。訪中団は親中派の議員から形成され、北京では、知日派の王毅外相に会談したと報道されている。しかし、偶然かどうかわからないが、議員団訪中の前日の26日に中国軍機は日本の領空を2分間ぐらい侵犯したと報道された。このことについて日本では、各メディアは大々的に取り上げ、中国軍の意図について専門家によるさまざまな分析が紹介されている。

おそらく中国政府は日本でここまで大騒ぎになっているとは想像もしなかったのかもしれない。中国政府の公式見解によれば、今回の領空侵犯は意図的ではないといわれている。日本の議員団は北京で王毅外相に懸念を表明したといわれている。しかし、この問題について何が深刻かを両者は十分に理解していないようだ。

領空侵犯は意図的ではないといわれているが、技術的なミスかどうか別として実際に領空侵犯があったあと、双方の間に設置されている軍同士のホットラインを使ってリスク管理を行わなければいけない。その後の報道をみるかぎり、ホットラインが使われた形跡がない。

領空侵犯は艦船が相手の領海に入るのと質的に違うものである。艦船の場合、無害通航であれば、国際法上、許されることである。領空侵犯は国際法においても許されない行為である。だからこそそのリスクを管理しないといけない。

日中は国交正常化してから50年以上経過した。この50余年の歴史を振り返れば、きわめて不本意の歴史だったと思われる。まず、その出発点はその前の不幸の歴史、すなわち、日中戦争の負の遺産がきちんと処理されないまま、日中友好が歩み出した。今から振り返れば、少なくとも日本側に大きな誤解があった。すなわち、かつての戦争について、中国に繰り返して謝罪し、戦争賠償こそ行わなかったが、巨額の経済援助と技術支援を行ったので、中国に許してもらえると思われた。

しかし、現実的にみると、いくら謝罪しても、中国側には許してもらえない。よく似た構図だが、実は日韓関係も同じである。韓国人にも根強い反日感情がある。日本社会には、これ以上贖罪意識を強く持ち続けるよりも、日本が普通の国にならないといけないと考える日本人は増えている。

近年、中国政府にも対日姿勢に変化があるように見受けられる。かつて日本の政治家が靖国神社を参拝すると、中国政府や公式メディアは猛烈に批判していたが、最近、それに関する批判がずいぶんトーンダウンしているようにみえる。実は、日中国交正常化のとき、両国政府は靖国神社の問題についてコンセンサスを得なければいけなかったと思われる。すなわち、靖国神社の参拝がかつての侵略の歴史を正当化するためのものではないことについてじっくり話し合うべきだった。それについてコンセンサスを得られそうになければ、靖国神社に変わる国立墓地を設置すべきだった。当時、国交正常化を急ぐあまり、この問題の処理を曖昧にしてしまい、今となってますます負の遺産になってしまった。

最近、中国人の若者が靖国神社で放尿するというとんでもない事件が起きている。これについて警備がずさんであると指摘しておきたい。中国人だけでなく、外国人は日本に来たら、日本の法律に従わなければならない。靖国神社をめぐり争議があることを考えれば、警備を強化する必要があるのはいうまでもないことである。

うした歴史の負の遺産のほかに、最近、日中の間で日本人ビジネスマンが中国の「反スパイ法」に違反したとして拘束されたことに加え、福島原発の処理水放出をきっかけに中国政府が日本の海産物輸入を禁止したことなどたくさんの問題がいまだに解決されていない。最近浮上してきたこれらの問題はかつての歴史の負の遺産と違って、どちらかといえば、経済関連の問題が多い。

日本との関係において中国政府がもっとも不満に思っているのは日米同盟の強化である。しかも、近年の日米同盟は単なるナショナル・セキュリティ(安全保障)だけでなく、経済安全保障について日米同盟が強化されている。経済安全保障の枠組みは明らかに対中包囲網になっている。中国政府は日本に不満を持っていても、仕返しのために切れるカードはそれほど持っていない。結果的に、日本人ビジネスマンがスパイ活動を行ったとして逮捕して、核の処理水が環境を汚染しているとして、日本から海産物の輸入を禁止しているのである。ある意味では、日本に揺さぶりをかけている。