パラ水泳選手の間でいじめ? 「障がいを疑われた」選手がメダル会見で涙 

AI要約

37歳の米国パラリンピック選手、クリスティ・ローリー・クロスリーが障がいを疑問視する批判や暴言に晒された

クラス分けに対する批判に苦しむクロスリーは、自身の障がいを明らかにし、多様性を示したいと語っている

最小限の障がい基準を満たすかどうかを審査し、障がいレベルによってアスリートを分類する方法が取られている

障がいを持ちながら世界記録を樹立したクロスリーは、事故や脳損傷など数々の困難を克服しながら競泳選手として活躍してきた

パラ五輪を目指していた過程でいじめを受け続け、国内外のチームメイトからも苦しんでいた

クラス分けに関する議論が進む中、クロスリーはパラスポーツの多様性を強調し、有害な環境の撤廃を訴えている

クロスリーは、自身の競泳夢を諦めずに2022年に米国記録を樹立したが、その間に多くの困難を乗り越えてきた

彼女のパラリンピックデビュー戦での世界記録は称賛されたものの、それに続く不当な批判や暴言に悩まされることになった

パラ水泳選手の間でいじめ? 「障がいを疑われた」選手がメダル会見で涙 

米国のパラリンピック競泳選手のクリスティ・ローリー・クロスリー(37)は、8月29日におこなわれた50メートル自由形S9の予選で、パラリンピックデビュー戦でありながら世界記録を樹立した。

しかし、その直後から「ネット上で批判に晒された」と、レース後の会見で明かしている。

その批判とは、彼女の障がいについてだった。「外見上、何の障がいもあるようにみえない」などと、彼女の「障がいを疑問視するものだった」という。

また、競泳場からのバス移動の際にも「他国の選手から暴言を吐かれた」と、彼女は述べている。

パラリンピックの水泳競技は、機能障がいの程度に応じて10クラスに分かれている。数値が低いほど、機能障がいによる身体の制限の度合いが高くなる。

パラリンピック協会の説明によれば、彼女が出場した「S9」には、「たとえば、脳性麻痺や片足の関節制限、両足を膝下から切断した状態」の選手も含まれるという。

そんななかで、両手足があるローリー・クロスリーは「障がいの重度を偽っているのではないか」という批判にさらされた。

決勝後の会見で、彼女は目に涙を溜めながらこう語っている。

「世界記録を達成して、喜びに浸れたのは束の間だった。世界中の人たちから、私の左半身麻痺や脊髄の嚢胞、頭蓋骨の一部を切除していることを『偽りだ』と思われていることに、完全に打ちのめされた」

米紙「USAトゥデイ」によれば、彼女は2007年に飲酒運転者にはねられて首と背中を損傷し、翌年また、車にはねられる事故に見舞われたという。

「そのときは気づかなかった」が、脳に損傷を負ったことで、それ以来腫瘍が膨らみ始めていたそうだ。

有望な競泳選手だった彼女は、事故の後も「身体の異変を感じながらも泳ぎ続けていた」。

しかし、2018年のある日、子供たちと雪合戦をしていた際に、雪のボールが彼女の頭に当たった。その瞬間、脳内に海綿体出血が起こった。脳検査によって出血と腫瘍が発見され、腫瘍を摘出するために頭蓋骨の一部を切除した。

結果、彼女は左半身に麻痺を負ったという。

彼女は水泳でオリンピックに出るという夢を一度は諦めたが、2021年の東京パラリンピックを観戦したのを機に、競泳トレーニングを開始した。そして、2022年には50メートル自由形で米国記録を樹立した。

「パラ五輪出場を目指して以来、過去2年間にわたっていじめを受けてきた」と、彼女は米紙「ワシントン・ポスト」に語っており、それは国外の選手だけでなく、米国のチームメイトからもだったと明かしている。

オンラインメディア「カンバセーション」によれば、機能障がいのレベルによって出場選手を分類する方法は、パラスポーツの多様性と公平性を保ちながら競技を合理化するための解決方法のひとつとして考案された。

通常、理学療法士や医師、およびスポーツの専門知識を持つ医療・技術分類者らによる審査があり、アスリートが各スポーツの国際連盟によって定められた「最小限の障がい基準」を満たしているかどうかを確認するという。

次に、各スポーツおよび障がいに特化した一連のテストを実施し、アスリートの分類(クラス)が判断される。さらに、競技中のアスリートを観察した後で、判断が再検討されることもあるようだ。

ローリー・クロスリーは、「手足を失った人たちだけがパラリンピアンではない。多様性を示したい。パラリンピック・スポーツのより良い未来のためにも、有害な環境は取り除かなければならない」と語っている。