「もう十分。すべての核実験停止を」 国連総会議長ら、国際デー寄稿

AI要約

国際デーである8月29日には、核実験に反対する重要性が強調される。

過去の核実験の影響や危険性、そしてCTBTの重要性が示される。

国際的な協力によって核実験の阻止が進められる中、今後の取り組みが期待される。

「もう十分。すべての核実験停止を」 国連総会議長ら、国際デー寄稿

 8月29日は、国連が定める「核実験に反対する国際デー」にあたる。デニス・フランシス国連総会議長と、ロバート・フロイド核実験全面禁止条約機関(CTBTO)準備委員会暫定技術事務局長が、すべての核実験の停止を求めて毎日新聞に寄稿した(日本語訳は国連広報センター)。

 2009年、国連総会で8月29日を「核実験に反対する国際デー」とすることが採択されました。

 現在のカザフスタンにあるセミパラチンスク核実験場が1991年8月29日に公式に閉鎖されたことを記念する日です。49~89年にかけて、この地だけで456回もの核実験が行われました。

 54~84年は世界各地で毎週、最低1回は核実験が行われており、その多くが広島の原子爆弾を凌駕(りょうが)する規模の爆発を伴うものでした。空で、地中で、海で、核爆弾が爆発していたのです。

 核実験による放射能は地球全体へ広がり、環境を根幹から汚染していきました。現在でも象牙、グレートバリアリーフのサンゴ、そして海底深くの海溝で、その痕跡をたどり、計測することができるのです。

 その間、核兵器の備蓄数は急速に拡大していきました。その数は80年代の初めまでには6万にも上り、その大半は広島と長崎に投下された原子爆弾以上に威力のあるものが占めるに至ったのです。

 人々の憤りは、日に日に高まっていきました。60年代までは、核実験の終結が核兵器の開発を実質的に抑制することになり、最終的には核の拡散防止、そして核軍縮を促進するというのが原則的な同意事項となっていました。68年に署名開始された核拡散防止条約の前文では、「全ての核実験の永続的な中止」を達成することが大々的に盛り込まれています。

 しかしそれ以降、96年に核実験全面禁止条約(CTBT)が締結するまで約30年もの時間を要し、その間、何百もの核実験が継続して行われていました。これは、世界でも画期的な条約の一つです。どれだけ多くの変化をもたらしたことでしょう。

 45~96年の間、2000回を超える核実験が行われました。96年以降、28年間に行われた核実験は、12回にも及びません。今世紀に入って実施されたのはわずか6回、いずれも北朝鮮によるものです。

 世界各地にある300を超える科学的モニタリング施設が、広島での原爆投下より明確に小規模な核実験であっても迅速に、ピンポイントで位置を把握できる事実があってこそ、本条約は効果があるのです。この地球において、秘密裏で核実験を行える国家は存在しません。

 CTBTは、ほぼ世界規模で国際的な協力を得ています。187の国が署名、178の国が批准しています。2021年以降は新しく約10の国が批准し、繰り返される核実験に対しグローバルに弾みを付け、特に小さな国々でこの傾向が顕著となっています。

 しかし、せっかくの流れにもかかわらず、現在の国際的に不安定な状況により、CTBTを契機に生まれた核実験反対の世界的な規範が脅かされつつあるのです。また核実験が行われたら、あるいは仮に核兵器が紛争で使用されたら、どうなってしまうでしょう?

 私たちは、国際的な信頼や連帯が壊滅的に崩壊するのを目の当たりにすることでしょう。核実験が規制されていない時代へ戻ってしまえば、安全な国、安全な共同体は存在しなくなり、地球上の誰にも影響を及ぼしてしまうことでしょう。

 過ちから学ぶことがある、と言いますが、語るべきことは常に多々あるものです。今回は、成功から学びましょう。CTBTは確固たる世界共通の幸福のため、外交において最善を尽くし、最新鋭技術を融合させるのです。透明性と信頼が徐々に低下していく状況の中で、改めて両者を確立していくのです。

 核実験に反対する国際デーに、国連総会ハイレベル会合が開催されます。この機会に全ての国々に対し、CTBTにのっとり、最終的に国際的な同意に至るべく、大胆かつ道義に基づいた決断を受け入れていただくようお願いいたします。全ての人のために、改めて核実験をストップさせましょう。もう十分です。