パリ五輪で金メダルなしのインド、人口14億人の大国はなぜ力を発揮できないのか

AI要約

インドは歴史的な金メダル獲得をはじめとするオリンピックでの実績が不振であり、スポーツへの投資不足が課題となっている。

人口規模や経済成長とは裏腹に、インドは他国に比べてメダル獲得数が非常に少ない状況にある。

健康問題や女性アスリートの障壁もあり、将来のオリンピックでの成功に向けて課題が山積している。

パリ五輪で金メダルなしのインド、人口14億人の大国はなぜ力を発揮できないのか

ニューデリー(CNN) 2008年北京夏季五輪の男子10メートルエアライフル決勝は最後の一発まで熾烈(しれつ)だった。インドのアビナブ・ビンドラ選手がほぼ完璧な射撃で戦いを制し、個人種目でインド初の金メダルを手にした。

数十年にわたる五輪での不振の末にインド国民の多くはこれが自国にとっての転機となることを期待した歴史的偉業だった。

しかしそれから16年、4回の夏季大会で手にした金メダルはわずか1個。インド国民の夢はほぼ実現していない。

国連によると、14億人あまりの人口を抱えるインドは世界で最も人口の多い国だ。22年には英国を抜いて世界5位の経済大国となり、昨年は宇宙船の月面着陸に成功したわずか4カ国のうちの一つとなった。

しかし、オリンピックとなるとインドは実力を発揮していない。

パリ大会ではわずか6個のメダルしか獲得できず、21年の東京大会の7個を下回った。

人口ではインドの4分の1未満である米国が126個のメダルを獲得して首位に立ち、中国が91個で続いた。

インドはメダル獲得数で71位となり、ジョージア、カザフスタン、北朝鮮など人口がはるかに少ない国よりも下位に沈む。

インドは1900年の初参加以来、合計41個しかメダルを獲得していない。

専門家によると、インドの潜在能力が未開発のままである背景にはいくつかの要因がある。なかでもスポーツへの投資不足は特に大きい。

インドスポーツ史に関する書籍の著者ロノジョイ・セン氏は、インド政府は伝統的なオリンピック強豪国のような国家トレーニングプログラムに資金を投入したことがないと話す。

「米国、中国、(当時の)ソ連のような国にとって、スポーツは新興国家の来歴の重要な部分であり、世界的認知と栄光を得る手段だった」(セン氏)

同氏は最も成功したオリンピック強豪国として中国を挙げ、同国では「子どもたちは歩けるようになった瞬間からトレーニングを受けている」と指摘する。

アナリストらによると、インドのアスリートは資金や施設の不足などに直面することが多い。

スポーツアナリストのボリア・マジュンダル氏は、14億人の人口に対してメダルが6個しかないという見出しは間違っているとし、13億9000万人がスポーツ施設を利用できないからだと説明する。

インドがオリンピックに派遣する選手やサポートスタッフの数も米国などのトップチームに比べてはるかに少ないという。例えば、パリ大会に派遣されたインドの選手は117人だったが、米国の選手は約600人だった。

専門家によると、インドはより広範な健康問題にも直面している。それが幼少期からの運動能力の開発を妨げているという。

インドは23年版世界飢餓指数報告書で125カ国中111位だった。報告書によると、インドの5歳未満の子どもの3分の1以上が栄養失調のために発育が遅れている。

もう一つの課題は家父長制が深く根付いたインドで女性アスリートが直面する障壁だ。

16年のリオ五輪で銅メダルを獲得したレスリングのサクシ・マリク選手は「レスリングを始めた子どものころから、まわりに『女の子なのに何ができるんだ、なぜ男のスポーツに参加しているんだ』といじめられた」と振り返る。