エアコンなしでも室温を大幅に下げられる「驚くべき古代の建設技術」とは

AI要約

スペイン南部のセビージャ市内にあるカルトゥーヤ・カナートでは、エアコンを使わずに室温を下げる技術が採用されている。

古代ペルシアの技術を応用し、地下20メートルの水路を通して冷たい空気を地表に送り、建物内外の気温を下げる仕組みが構築されている。

このプロジェクトは大規模だが、エネルギー消費は少なく、EUの支援によって実験的に進められている。

エアコンなしでも室温を大幅に下げられる「驚くべき古代の建設技術」とは

スペイン南部の街セビージャでは、夏には40度を超えるような暑い日々が続く。そんな同市には、エアコンを使わずに室温を10度近くも下げられているエリアがあると、米メディア「ブルームバーグ・グリーン」は報じる。

市の中心部から2キロほどのところにある「カルトゥーヤ・カナート」という場所だ。サッカー場2つ分の広さの敷地に、円形劇場、講堂、緑地、遊歩道、ベンチが設けられ、あちこちに日陰ができている。ここでは太陽光発電を使って、空気と水を循環させることで気温を下げているという。

地区全体に日光を遮り、熱をためこまないようにするさまざまな技術が導入されているが、特に注目すべきは、古代ペルシアの技術が応用されていることだ。3000年前、ペルシア人は地下20メートル以上の深さに水路を作り、各地に水を運搬して農業をした。当時、人々は水路内の空気も冷やされると気づき、地表にその冷気を送って、屋内の温度を下げていたという。

このやり方に倣い、カルトゥーヤ・カナートでは、地下20メートルの深さに格子状に水道管が引かれた。地下では水と空気は自然と冷やされる。水路に沿って垂直に通気孔が作られ、冷たい空気が地表に送られる。

水路の水は循環しており、夜間に地下のタンクで冷やされ、昼間にはソーラーパネルの電力でポンプに押し出される。冷たい水が日中にパイプを通ることで、その周囲の空気は冷やされるので、ファンを使って建物の中に冷気が送られるのだ。屋外では、冷たい水がミスト状に放出され、気温を下げている。

この構造は大規模だが、運用にかかるエネルギー量は、化石燃料を燃やしてエアコンを使い続けるより少ない。このプロジェクトは実験的なもので、欧州連合(EU)の資金を得て、500万ユーロ(約8億6000万円)の予算をかけてつくられた。