アフリカ勢初の体操・金メダルだが… 現地報道に見える「異様な点」

AI要約

フランス生まれのアルジェリア代表体操選手が、初の金メダルを獲得しアフリカに初めてメダルをもたらす快挙を達成。

アルジェリアとフランスの二重国籍を持つ選手が、イスラム主義による政治的な背景から、上半身だけを写真に使用されるという問題が浮上。

イスラム教文化とスポーツ要求との板挟みに立たされたアルジェリアの女性アスリートへの理解と尊重が求められる。

アフリカ勢初の体操・金メダルだが… 現地報道に見える「異様な点」

8月4日、パリでは体操女子段違い平行棒の決勝がおこなわれ、アルジェリア代表のカイリア・ヌムール(17)が金メダルを獲得。体操では初めてのメダルをアフリカにもたらした。

アルジェリアとフランスの二重国籍を持つヌムールは、フランス生まれ、フランス育ちだが、膝の手術からの復帰を認めなかったフランス体操連盟と所属クラブの対立により、代表選手から外され、2023年、父の母国であるアルジェリアにスポーツ国籍を移した。こうした経緯もあり、アルジェリア国民はヌムールの快挙に沸き、現地メディアも大いに盛り上がっている。

そんななか、仏誌「ル・ポワン」のコラムニストは、アルジェリアメディアによるヌムール報道の「異様な点」を指摘する。アルジェリアの報道、特にイスラム主義や保守主義の傾向が強いメディアでは、彼女の全身が映し出されることがほとんどないのだ。使われるのは、トルソーのように「上半身」の写真だけ。

問題はレオタードにある。「体操では、太ももの見えるレオタードを着て練習する。それは『イスラムのモラルに背く』一種のビキニであり、『ベール』や『貞操』と対極をなすもの」だとル・ポワンは説明する。

こうした背景のもと、アルジェリアの著名スポーツ評論家、ハフィド・デラッジは大胆な行為に出て炎上した。イスラム主義的な説教を好むことでも知られるデラッジは、数百万のフォロワーを持つ自身のインスタグラムに、スタジアムで両手を上げるヌムールの写真を投稿。彼女の下半身は、画像加工によって足首までの長いプリーツスカートに覆われている。

現地メディア「アルジェリ360°」は、この画像加工は国内のネットユーザーたちにも衝撃を与えたと伝える。「検閲だ」、「選手らが競技の規定に沿った服装をするという自由の侵害だ」などと批判の声が上がり、投稿は削除された。

同メディアはこのスキャンダルをこうまとめる。

「多くの人にとって、カイリア・ヌムールの写真の加工は、(イスラム教国における)文化的期待と、スポーツ的要求との板挟みになるという、アルジェリアの女性アスリートが直面する難問を示している。アスリートのありのままを尊重し、このような論争に晒されることなく、国際舞台において誇りを持って国を代表し、競技に挑めるよう、人々の集団的意識改革を求める声もあがっている」