パリ五輪会場で彼女が「台湾加油」ポスターを掲げると警備員が動き、中国人らしき男が妨害してきた

AI要約

フランスで留学中の台湾人留学生が、五輪で中国と対戦する台湾チームを応援するために「台湾加油」のポスターを持ち込んだところ、警備に取り囲まれポスターを奪われる事件が発生。

台湾はIOCの決まりにより、「チャイニーズ・タイペイ」という名称でオリンピックに参加せざるを得ない状況にあり、国旗も使用できないため、その名前で競技に出場している。

米国などの政治家らからは、IOCの措置が不当であるとの批判があり、他の属領がそれぞれの名前で出場できるのになぜ台湾だけが制限されているのか疑問の声が上がっている。

パリ五輪会場で彼女が「台湾加油」ポスターを掲げると警備員が動き、中国人らしき男が妨害してきた

国旗もダメ、政治的なメッセージもダメというオリンピックの決まりを自分はわきまえているとアンジェリーナ・ヤンは思っていた。ヤンは自分が留学しているフランスでの五輪に出場する同国人の選手を応援しようとワクワクしていた。

そこで台湾からの留学生であるヤンは、自分では無難だと思うポスターを作った。故郷の島をかたどり、そこに「台湾加油」(がんばれ台湾)という文字を入れた。

ところが、そのポスターを観客席で広げて、バドミントンで中国と対戦する台湾チームを応援しようとすると、すぐさま取り囲まれてしまった。ヤンは言う。

「それでもポスターを持っていると、警備の人が近くに来て無線機で同僚としゃべり続けていました。そのあと、中国人らしき男性が現れて、私の前に立ってポスターが見えないようにしたのです」

そのあと男は、ヤンの手からポスターを奪い取った。

「すごく驚きました。それと同時にすごく悲しくて腹が立ちました。何も悪いことはしていないのに。なんぜこんな扱いを受けるんでしょうか」

台湾の外交部は、この事件を暴力的だとし、友情と尊敬を重んじる五輪の価値観に反すると述べ、フランス当局に捜査を要請している。それに対して国際オリンピック委員会(IOC)は、バナーを認めないという「非常に明確な規則」があると述べた。

台湾(正式には中華民国)のオリンピック選手は長年、「チャイニーズ・タイペイ」というチーム名の下で出場することを余儀なくされてきた。その決まりは、IOCによって厳しく義務づけられている。

こうした決まりは、IOCに対する中国共産党政府の圧力のせいとされることが多い。中国は、台湾を併合するつもりの自国の領土だと主張している。

中国はその強大な影響力を活かして、台湾が国際的に活躍する場をできる限り狭めようとしているのだ。そうした場が国連であれ、バードウォッチング協会であれだ。

だが、「チャイニーズ・タイペイ」という呼称は、台湾のかつての独裁的な統治者らに遡るものでもある。彼らは国際舞台で公式に「中国」を代表すべく、北京の共産党政府と長年競い合っていた。1976年には、「中華民国」ではなく「台湾」選手団として出場してはどうかというIOCの提案を却下している。

いまや「台湾選手団」といったほうが、もっぱら台湾人を自負するようになっている人々をより正確に代表することにはなるだろう。だが、その選択肢はもはやない。

現在、オリンピックで国旗が禁止されている選手団はわずか3つで、その1つが台湾だ。残る2つはロシアとベラルーシで、ウクライナ侵攻に対する罰として国旗が禁止されている。

中国のあからさまな圧力のもとで、IOCは台湾をその国名で出場させることを拒否している。

米国の政治家らは、IOCのスタンスを「比類なく理不尽」と表現している。台湾が属領だと一般的に認められたとしても、たとえば、英領のバミューダ諸島や米領のプエルトリコなどは、それぞれの名前で出場が認められているではないかと主張しているのだ。