【パリ五輪】緑色のセーヌ川…トライアスロン開催決定は20時間前のサンプルで判断 選手の健康より“大会レガシー”優先か

AI要約

男女のトライアスロンが開催前に水質の問題に直面し、最新の水質検査結果を待たずに競技が強行された。

選手たちは運営側の対応に対して賛否両論で意見が分かれ、水質の悪さや競技への影響について述べられた。

選手の健康を第一に考える重要性と、トライアスロン競技が過酷なため、安全性が確保されることが必要である。

【パリ五輪】緑色のセーヌ川…トライアスロン開催決定は20時間前のサンプルで判断 選手の健康より“大会レガシー”優先か

7月31日、開催が危ぶまれていた男女のトライアスロンが実施された。

26日から2日間にわたって降り続いた雨の影響で水質が安全基準を満たさず、28日、29日の公式練習は中止に。さらに30日に予定されていた男子の競技も1日延期され、31日に男女同日の開催となった。

ここで問題とされるのは、当日の水質検査の結果だ。

競技開催の決定はスタートの時間前、31日午前4時過ぎに発表された。

“午前3時20分に受領した最新の水質分析結果は、世界トライアスロンによって適合と評価され、トライアスロン競技の開催が許可された”

パリでは26日の開会式から2日間雨が降り続いた。その影響で生活排水や汚水などがセーヌ川に流れ込み、水質は悪化。しかし、その後は晴天が続き、水質は確かに改善していた。水の色も明らかに茶色がかった緑から、少し透明度が上がっていたのが目に見えた。

しかし、競技実施の判断に使用された水は、20時間以上前に採取されたものだったのだ。検査結果が出るまでに時間を要するからである。

レース当日、パリでは未明から雨が降っていた。気象当局によれば31日午前0時からスタート直前の6時までの間に5ミリの降水量を記録した。つまりIOC=国際オリンピック委員会などは、雨が降った後の水質検査の結果を待たず、雨が降る前に採取した水の検査結果で判断して、午前8時から女子、10時45分から男子の競技を強行開催したのだ。

このことについてIOCは当日の定例会見で「私たちは国際競技団体が定めたプロセスに厳格に従った。この後、さらなる水質検査も行うが、今朝の検査結果は競技を実施するのに十分前向きなものだった」と説明し、安全性に自信を示した。

実際、競技に参加した選手たちはどのように感じたのか。

女子銀メダリストでスイスのジュリ-・デロン選手は「今朝のサンプルは分析に時間がかかるのでまだ結果はわかりませんが、開催者は私たちの安全を確保してくれると信じています」と述べた。

また、男子の金メダルに輝いたイギリスのアレックス・イー選手は「セーヌ川の汚染はちょっとアンラッキーでしたが、五輪で最も美しい会場に恵まれたことは、ラッキーでした。 他国は水質改善を重要視してくれないので、選手にとって課題でしたが、フランス政府は積極的に取り組んでくれました。」と運営側の対応を評価した。

一方、スペイン代表で、医師でもあるミリアム・カシージャス選手が自国メディアのインタビューで「運営側は選手のことを全く考えていない。 彼らが最も重要視していたのはセーヌ川を美しく見せて売り出すことで、選手の健康については考えていない。」と痛烈に批判した。そして「私たちはまるでサーカスのピエロだ」と、インタビューを締めくくった。

ベルギーのヨリーン・フェルメイレン選手は地元メディアの取材に「橋の下を泳いでいるとき、あまり想像したくないようなものの匂いがしたり、見たりしました。セーヌ川の水は100年ものあいだ汚れていたので、運営側は、『選手の安全が第一』などと言うべきではありません。」

「(レースが実施できなければ)パリ、そしてフランスにとって恥だったでしょう。彼らが今すべきことは、アスリートが病気にならないことを祈るだけです」と皮肉まじりに語った。

同じくベルギーのマーテン・ファンリール選手も批判的だ。「泳いでいる時は自分の手が見えませんでした。それくらい水が濁っていたのです。また、水を飲んでしまったため、少し胃が痛くなりました」と体の不調を訴える。

体力の極限に挑む過酷な競技、トライアスロン。通常でもレース後には疲労などから体調不良を訴える選手もいるほどだ。だからこそ、競技は選手の健康を第一に考えて実施されなければならない。