「髪がたくさん抜け、右手は麻痺」…最低限の医療も受けられないイランの刑務所の「過酷すぎる」生活

AI要約

イランでは思想犯・政治犯として逮捕された人々が過酷な拷問を受ける現実が明らかになっている。

ナルゲス・モハンマディがイランの獄中で受賞したノーベル平和賞を通じて告発を行い、自由と闘い続ける人々の姿を伝えている。

イラン系英国人であるナザニン・ザガリ=ラトクリフの逮捕と監禁の過程が紹介され、彼女の過酷な状況と医療の不備が明らかになっている。

イランの状況を通じて、日本人が持つジェンダーギャップや宗教への疎さにも目を向け、世界のつながりと自由を取り戻すための闘いを共感できるように訴えかけている。

本書『白い拷問』の刊行が16カ国で予定されており、世界中にアピールされる問題を啓発するとともに、実態を明らかにしている。

ナザニン・ザガリ=ラトクリフの物語を通じて、イランの刑務所での過酷な状況や医療の不備、政治犯の現状が浮き彫りになっている。

「髪がたくさん抜け、右手は麻痺」…最低限の医療も受けられないイランの刑務所の「過酷すぎる」生活

イランでは「好きなことを言って、好きな服を着たい!」と言うだけで思想犯・政治犯として逮捕され、脅迫、鞭打ち、性的虐待、自由を奪う過酷な拷問が浴びせられる。2023年にイランの獄中でノーベル平和賞を受賞したナルゲス・モハンマディがその実態を赤裸々に告発した。

上司の反対を押し切って担当編集者が日本での刊行を目指したのは、自由への闘いを「他人事」にしないため。ジェンダーギャップ指数が先進国最下位、宗教にも疎い日本人だからこそ、世界はつながっていて、いまなお闘っている人がいることを実感してほしい。

世界16カ国で緊急出版が予定されている話題作『白い拷問』の日本語版刊行に先駆けて、内容を一部抜粋、紹介する。

『白い拷問』連載第18回

『その姿に「母はショックで失神」…「水と牛乳しか飲めない」イランの刑務所に拘禁される女性がとった「衝撃すぎる」反抗』より続く

語り手:ナザニン・ザガリ=ラトクリフ

ナザニン・ザガリ=ラトクリフ(1978年テヘラン生まれ)はイラン系英国人で、2016年4月に2週間の旅行の予定でイランを訪問した。しかし帰国するときにイランの空港で身柄を拘束された。逮捕時、ナザニンは乳幼児の娘、ギスーと一緒だった。警察は幼い娘を彼女の両親に預け、彼女のパスポートを没収し、スパイ容疑で逮捕した。判決は5年の禁固刑で、彼女はケルマン刑務所ののち、エヴィーン刑務所に移送された。彼女の夫リチャードと、彼女が勤務するトムソン・ロイター財団は起訴内容を全て否定した。イラン政府は長年イギリスから回収できずにいた債権を回収するために、ナザニンを人質にして監禁していた。

――医療はどうでしたか?

医療は全く受けられませんでした。私の右手はもう長いこと感覚がなく、首も常に痛みました。左にも右にも回すことができないのです。とにかく極度に疲労していました。疲労のあまり、数分歩くだけで動けなくなりました。激しい動悸がするのです。

吐き気もひどかったので、よく吐き気止めをもらいましたが、それ以外は何の処置もしてもらえませんでした。ウイルス性の何かだろうから、よく眠って煮沸した水を飲みなさいと言われました。