不平等すぎる「採用制度」に学生が激怒─バングラで勃発したデモが、独立以来最悪の暴動に発展した理由

AI要約

バングラデシュで起きた大規模な抗議活動の背景には、公務員の仕事を巡る不平等な制度がある。

制度廃止に対する不満から学生たちがデモを展開し、警察との衝突が激化した。

ハシナ首相による弾圧は国民の怒りを招き、多数の死者を出すなど深刻な状況が続いている。

不平等すぎる「採用制度」に学生が激怒─バングラで勃発したデモが、独立以来最悪の暴動に発展した理由

7月に入ってから、バングラデシュで大規模な抗議活動が起きた。デモ隊や警察を含め、少なくとも160人が死亡したとされている。

抗議活動のきっかけは、バングラデシュの雇用制度だ。

米紙「ニューヨーク・タイムズ」によると、同国における若者の失業率は2022年時点で16.1%だった。そんななか、公務員の仕事を求める人は多い。「安定している名誉ある仕事」であり、福利厚生も手厚いからだ。毎年約4000の募集枠があり、30万人以上の学生がこの職を求める。

ところが、いくら実力があってもチャンスは平等ではない。

バングラデシュの「建国の父」であり、現首相であるシェイク・ハシナの父、ムジブル・ラフマンは、パキスタンからの独立戦争で戦った何千人もの退役軍人の生活が確実に守られるよう、1972年に割り当て制度を創設した。公務員の採用枠の3割が、退役軍人の家族に割り当てられることになったのだ。

その後、この制度の対象者は1997年と2010年に拡大され、退役軍人の子供、さらには孫まで含まれるようになる。不平等な制度に対する国民の反発が高まると、政府は2018年に制度廃止を決めたが、今年6月になり、高等裁判所が政府決定を覆した。

割り当て制度の復活に対する抗議として、学生たちはデモを展開した。

当初は平和的だったデモがなぜ激化したのだろうか。首都ダッカで抗議活動に参加した学生が、英「BBC」の取材に応えている。

「7月18日の午前11時半頃、警察が学生たちに催涙弾を投げつけたんです。数人の学生がこの催涙弾を拾い、警官に向かって投げ返しました」

その翌19日、デモ参加者らは警察に向かってレンガや石を投げつけ、警察は散弾銃や催涙ガス、音響手榴弾で応戦し、ヘリコプターが空から発砲する事態にまで発展したという。

またニューヨーク・タイムズによれば、ハシナ首相は、抗議活動を始めた学生たちを「ラザカール」の子孫と呼んだ。ラザカールとは「独立戦争時の裏切り者」を意味する言葉だ。これがデモ参加者らを激怒させ、事態をより悪化させたと見られている。

軍まで配備したハシナ首相による今回の弾圧は、「ここ数十年で前例のない残虐行為」だと批判されている。大勢の死者まで出したことに対し、国民の怒りもすぐには収まりそうにない。