<バイデン撤退か>トランプ銃撃事件で批判しぼむも、厳しい選挙戦の見通し、注目の1週間へ

AI要約

米国のバイデン大統領がトランプ共和党大統領候補とのTV討論会で失態を演じた後、民主党内でのバイデン撤退論は高まっていたが、トランプ氏の銃撃事件により失速気味になっている。

トランプ氏の銃撃事件をきっかけに、共和党の結束が高まる中、民主党内の分断が加速する懸念がある。

バイデン氏の撤退を求める動きは一時的に冷却されつつあるが、民主党内部では依然として差し替え候補の必要性を主張する議員もいる。

<バイデン撤退か>トランプ銃撃事件で批判しぼむも、厳しい選挙戦の見通し、注目の1週間へ

 米国のバイデン大統領がトランプ共和党大統領候補とのTV討論会で大失態を演じて以来、民主党内で一気に高まりつつあった選挙戦からの撤退論がトランプ氏銃撃事件以来、失速気味になっている。一方で、このままバイデン氏が8月党大会で民主党候補に正式指名された場合、敗色が一層濃くなるとみられるだけに、民主党としてのジレンマは深刻だ。

 「“バイデン・ダム”決壊間近か」――。米マスコミの中には、去る6月27日討論会直後から民主党内で噴出した撤退要求の勢いをこんな見出しで報じたところもあった。

 実際、その後1週間以内に、ロイド・ドゲット(テキサス州)、ラウル・グリジャルバ(アリゾナ州)ら5人の民主党下院議員がバイデン氏に直接撤退を要求した。そして今月12日までに、その数は18人にまで膨れ上がった。

 上院でも、去る10日、ピーター・ウェルチ議員(バーモント州)が先陣切って、撤退要求の戦列に加わった。このため、バイデン氏が撤退に追い込まれるのも「時間の問題」とみられていた。

 ところが、13日夕に起きたトランプ氏銃撃事件以来、民主党内のバイデン批判の動きはぴたりと水を打ったように止まった。 

 同事件発生時、銃弾で右耳に傷を負い出血しながらもこぶしを振り上げ闘志を見せるトランプ氏の“剛毅ぶり”が全米でTV放映されたのをきっかけに、共和党の結束が一段と高まりつつあるのと対照的に、民主党内の分断が加速することへの警戒感が出てきたためだ。

 米Wall Street Journal紙は16日、「民主党内の反乱鎮静化、だが、バイデン再選への展望より困難に」と題する以下のような解説記事を掲載した:

 「トランプ銃撃事件は、バイデン大統領の今後の政治展望に尋常ならざる影響を与えつつある。それは、バイデン撤退コールを一時的に冷却させると同時に、11月大統領選での勝算を減退させる可能性を持っている」

 「事件以来、何人かの民主党下院議員は、バイデンを選挙戦から撤退させようとする動きにはずみがつき始めたかに見えたが、今や勢いを失いつつあることを認め、別の議員は『バイデン氏のメンタル面でのよほどの衰えが今後表面化しない限り、来月党大会までに彼を他候補に差し替える時間的余裕はなくなりつつある』と語る。現に去る13日以来、民主党議員は誰一人、バイデン撤退を求めていない。(中略)また、撤退要求の“時間切れ”を待つのが今のホワイトハウスの戦略だとする見方もある」

 「その一方で、現段階で撤退コールが一時停止しているものの、依然、大統領選で民主党が勝利を期すためにも、候補の差し替えが不可欠と考える議員が少なくなく、複数の民主党政治献金者や議員スタッフは、共和党大会終了後に再びその動きが息を吹き返すとみている。ウェルチ上院議員も『撤退要求は一時停止したにすぎず、終息したわけではもちろんない。いずれにしてもわれわれにとっての問題は解決したわけではなく、できるだけ早いうちに候補差し替えの可能性について結論を出す必要がある』と語っている」 

 「しかし、現実論に立つかぎり、今後、バイデン氏が撤退するための窓が急速に狭まりつつあることも事実だ。民主党大会ルール委員会当局が、来月の候補指名党大会を待たず、近日中にも、全米各州民主党代議員のオンラインでの『点呼』による『バイデン指名』を確定させようとしていることもひとつ挙げられる。ただ、堂々とオープンなかたちで最終候補を決める例年の党大会の熱狂と盛り上がりを欠くことになるだけに、反発する声も少なくない」

 ウォールストリート・ジャーナル紙と同様に、米NBCテレビのカール・リー報道局長も去る16日放映の解説の中で「バイデン撤退コールはまるで遠い過去(ancient history)のようになってしまった」とコメント、トランプ銃撃事件以来、民主党が混迷に陥っている状況に言及した。