バンス議員を副大統領候補に指名、トランプ氏選考の経緯は

AI要約

トランプ前大統領が、副大統領候補としてJ・D・バンス上院議員を選出するまでの選考過程が、トランプ氏の演出と優柔不断さを物語るものだった。

トランプ氏とバンス氏の人間関係が春から夏に発展し、バンス氏は裕福なIT起業家をトランプ氏と引き合わせる役割を果たした。

最終面接となったマール・ア・ラーゴでの会談後、バンス氏は選出の確信が持てないままだったが、トランプ氏は最後の数時間まで考えを巡らせ続けた。

バンス議員を副大統領候補に指名、トランプ氏選考の経緯は

(CNN) 11月の米大統領選で共和党からの指名を確実にしていたトランプ前大統領は、何カ月にもわたり関係者らと非公開の協議を進めた後、副大統領候補選出の期限の前日になって、電話で新たな声を受け取った。

その人物は、電気自動車(EV)大手テスラの最高経営責任者(CEO)で富豪のイーロン・マスク氏。マスク氏は、J・D・バンス上院議員(オハイオ州選出)を選ぶよう最後の瞬間に促した複数人のうちの一人だった。

トランプ氏は15日、ついに、副大統領候補にバンス氏を選んだと発表した。

トランプ氏が、上院議員としては1期目で自身の半分の年齢のバンス氏にどうやってたどり着いたのかという過程は、演出が巧みな人物としての本能と慢性的な優柔不断さを物語る。副大統領候補選考の過程は、トランプ氏がホストを務めたリアリティー番組「アプレンティス」とよく似ている。絶え間なくうわさ話が持ち上がるが、その多くはトランプ氏自身によるものだ。舞台裏では声高な派閥争いが繰り広げられる。秘密の選考過程によって、候補者は何週間も状況がつかめない状況に置かれる。そして、ウィスコンシン州ミルウォーキーでの共和党全国大会の開幕に興趣を添える驚きの発表。

トランプ氏は今回の決断について15日午後に、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」を通じて発表した。トランプ氏はフォロワーに対し、バンス氏について、副大統領候補としての役割に最適な人物だと説明した。複数の情報筋によれば、トランプ氏がバンス氏に対して副大統領候補に指名するとの情報を伝えたのは発表の直前だった。

トランプ氏とバンス氏との「政略結婚」はすぐに成立したものではなかった。今年に入って、トランプ氏は共和党からの指名獲得に向けて取り組んでいたが、バンス氏は依然として、トランプ陣営から副大統領候補の選考に参加する可能性について打診すら受けていなかった。

トランプ氏が指名獲得に向けた予備選を優位に進めるなか、副大統領候補の選考の動きが始まった。バンス氏の陣営も自身の名前を耳にし始める。トランプ氏は献金者や身内との夕食会で、自身の口から候補者の名前を出すことで知られている。これがバンス氏にまつわる初期の計略のきっかけとなった。バンス陣営が、トランプ氏がバンス氏を正式に検討していることについて初めて認識したのは、6月上旬に副大統領候補の選考書類を受け取ったときだった。

トランプ氏とバンス氏の人間関係が大きく発展したのは春から夏にかけてで、選挙のイベントや非公開の献金者の集まりに一緒に参加してからだった。元ベンチャーキャピタリストのバンス氏は、トランプ氏と裕福なIT起業家とを引き合わせる役割を果たした。

情報筋によれば、15日の発表前に2人が最後に顔を合わせたのは13日で、トランプ氏の邸宅「マール・ア・ラーゴ」でのことだった。この数時間後にトランプ氏はペンシルベニア州バトラーに向かった。情報筋のひとりは、その時の会談について「職を得るための最終面接」だったと表現した。

情報筋によれば、バンス氏はマール・ア・ラーゴを去る際、チャンスがあることは信じていたものの、実際に選ばれたのかどうかについては確信が持てていなかった。一方、トランプ氏は公の場でも非公開の場でも、他の副大統領候補について、引き続き言及していた。こうした副大統領候補の中には、ノースダコタ州知事のダグ・バーガム氏や、マルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州選出)が含まれていた。両者は先週、トランプ氏と面会していた。

バーガム氏とルビオ氏による水面下でのロビー活動は最後の数時間まで続いた。トランプ氏には、ティム・スコット上院議員(サウスカロライナ州選出)やバージニア州知事のグレン・ヤンキン氏を推す電話もあった。情報筋によれば、トランプ氏は最後の24時間になっても考えを巡らせ、側近でさえ最後の人選については推測するしかなかったという。

こうした絶え間ない電話でのやり取りは、マイク・ペンス氏を選出した後にもためらいを見せた2016年の選考過程と同じものだ。ペンス氏が共和党からの副大統領候補として選ばれたことを知った際の電話では、トランプ氏はペンス氏に正式に依頼をすることはなく、副大統領候補としての出馬を示唆するにとどまった。