韓国半導体業界は電力・水・人手不足なのに…サムスン電子労組がついにスト突入【7月11日付社説】

AI要約

サムスン電子の最大労働組合である全国サムスン電子労働組合が賃金を求めてゼネストに突入し、無期限ストの方針に変更した。

世界的な半導体不況の影響で成果給が支給されず、組合員数が増加。半導体部門の組合員が大半を占める。

半導体産業の重要性やサムスン電子の経営状況、労働組合の要求が半導体業界に与える影響について懸念が表明されている。

韓国半導体業界は電力・水・人手不足なのに…サムスン電子労組がついにスト突入【7月11日付社説】

 サムスン電子の最大労働組合である全国サムスン電子労働組合が同社の創設以来初となるゼネストに突入し、さらに無期限へと方針を変えた。労使協議体で合意した以上の賃金を手にするためだ。組合はストの目的について「半導体製造の遅れ」を掲げている。組合員数は3万人以上で、これはサムスン電子の五つの労働組合の中で最も多く、また組合員のほとんどが半導体部門に所属しているという。昨年は世界的な半導体不況で成果給が支給されず、その影響もあって組合員数は一気に増加したようだ。組合によると、ゼネストに参加の意向を示した組合員数は6500人以上で、うち半導体職群は約5200人だという。

 世界は今「チップウォー」(CHIP WAR、半導体戦争)の渦中にあり、主要国は生き残りを懸けて半導体戦争を続けている。この熾烈(しれつ)な競争の中、ファウンドリー(半導体チップ生産工場)で世界トップの台湾TSMCは無労組経営を宣言し、24時間365日にわたり製造ラインを稼働している。また労働組合は1987年の同社創設以来、一度も結成されたことはないという。半導体が単なる産業ではなく「中国の侵攻から台湾を守る戦略的資産」という大きな責任感があるからだ。

 国の戦略産業である半導体は韓国にとってもそれ以上の意味を持つ。輸出品目1位であり、また国内での生産や投資に及ぼす影響も非常に大きいからだ。昨年はサムスン電子に対して6兆7000億ウォン(約7800億円)もの税の減免が行われた。与野党対立で法律の制定が後回しになっている国会でも、半導体産業だけは支援の方針で一致し、与野党双方が半導体産業を全面的に支援する法案を提出している。つまり半導体は単なる一産業分野ではなく、国運を賭けた命綱でもあるのだ。

 サムスン電子の従業員は賃金が平均で年間1億2000万ウォン(約1400万円)以上と韓国では最高の待遇を受けている。ただ昨年は半導体不況の影響でサムスン電子は半導体部門だけで14兆8800億ウォン(約1兆7400億円)もの赤字を記録し、それまで支給されていた成果給がストップした。巨額の赤字を記録したためある意味当然のことだろう。しかし今は半導体景気が上向いており、近くサムスン電子の半導体部門従業員は韓国のどの企業の従業員よりも多くの賃金が支払われるはずだ。しかし彼らはより多くの賃金を要求し、半導体を人質にストを強行している。「金毒」あるいは「金に夢中になった」という表現は行き過ぎだろうか。組合の規模は現時点で決して大きくはないが、後に全国民主労働組合総連盟(民主労総)などが入り込み、もっと多くの賃金を要求するようになれば、半導体産業そのものを揺るがす事態に発展するかもしれない。韓国の半導体業界は電力不足、水不足、人手不足に苦しんでいるが、これにストまで加われば世界的な競争でどうやって勝ち残れるだろうか。