NATO首脳、関心はトランプ2・0の欧州・ウクライナ プーチン氏に妥協の懸念も

AI要約

トランプ前大統領の再選可能性による欧州安全保障とウクライナ支援の未来が焦点となっている。

トランプ氏はNATO首脳会議で第三次大戦の阻止を訴え、欧州政策に不透明さを見せている。

孤立主義への懸念や中国重視の方向性、プーチン露大統領との関係についても不安が残る。

【ワシントン=渡辺浩生】北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に集結した加盟国首脳らの大きな関心は、共和党のトランプ前大統領が返り咲いた際の欧州安全保障とウクライナ支援の行方にある。同国のゼレンスキー大統領も「みなが11月(の大統領選)を待っている」と語った。「力による平和」という保守外交に回帰する可能性が指摘される一方で、孤立主義に傾斜してプーチン露大統領と妥協する危うさもぬぐえない。

「私が大統領に戻れば第三次大戦突入を阻止する。われわれはそれに近づいているからだ」。トランプ氏はNATO首脳会議が開幕した9日、南部フロリダ州で訴えた。

現政権下でロシアのウクライナ侵略や親イラン勢力のイスラエル攻撃が起きたことをバイデン氏の批判材料とするトランプ氏。2期目のNATO政策構想は不透明だ。

前政権関係者や保守系外交専門家の発言から浮かぶひとつの方向性は、NATO加盟国の負担増によって欧州安保への関与を弱めて、最大脅威とみなす中国シフトを進めることにある。

前政権で補佐官を務めたケロッグ退役陸軍中将は「終わりのない戦争の阻止が最優先政策」と強調する。それには現在進行形のウクライナ侵略を早期終結させ、中国の台湾侵攻の抑止に資源を集中させるべきだと説く。

ウクライナに関し「戦争をすぐ終わらせるというトランプ氏の発言がすべて」としつつ、ウクライナ領土の一部占領を受け入れる形でロシアと和平協定を結ぶ可能性や、プーチン露大統領が交渉を拒めば一転して支援を増強する選択肢も示す。

国際政治学者のマシュー・クローニグ氏は「トランプ氏が勝利すればNATO撤退の悪夢のシナリオとなるとの不安があるが、本人はそう言っていない。1期目も孤立主義ではなかった」と指摘。党内結束を図る意味でも、軍事力の強化を通じ対ソ冷戦を勝利に導いたレーガン元大統領流の「力による平和」を追求する可能性を示す。

しかし、ウクライナからバルト諸国や中東欧へ支配を広げようとするプーチン氏の野望をトランプ氏が封じ込めるかの懸念は残る。「プーチン氏への妥協はさらなる侵略のドアを開ける」。共和・民主両政権で欧州政策に従事したフリード元国務次官補は警告した。