ヒズボラ「国を守ってくれる」…イスラエルの攻撃受けたレバノン男性、ベイルートで先の見えない避難生活

AI要約

避難民がベイルートに逃れる中、戦闘地帯となった町では生活が疲弊し、先行き不透明な状況になっている。

ヒズボラとの連帯を強調する避難民もおり、ヒズボラを支持する人々が存在する一方、甚大な被害が出ていることも明らかになっている。

国際移住機関によると、避難者数が増加している中、人道支援は不十分な状況が続いている。

 イスラエル軍とレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの戦闘が激しさを増す中、7月上旬にレバノンの首都ベイルートに入った。戦闘地帯となった同国南部から首都に逃れた避難民は先の見えない生活に疲弊しながら、ヒズボラとの連帯を強調した。(ベイルート 西田道成)

 「帰る場所を失った。この先の展望なんて何もない」。国境近くの町クファルケラからベイルートに避難してきたフセイン・アブダラさん(35)は力なく語った。

 町では兄弟で穀物店を営んでいたが、昨年10月にヒズボラがイスラエルを攻撃し、応酬が始まった。ヒズボラの戦闘員が住み着いていたとされる近所の建物が次々と標的となった。

 11月下旬におばがイスラエル軍の攻撃を受けて死亡したのを契機に、ベイルートの親戚宅へ避難した。12月以降、町への攻撃は激化し、店も自宅も失った。町は大きな被害を受け、住民はいなくなったという。

 ヒズボラは米国などが「テロ組織」に指定しているが、アブダラさんは「国を守ってくれる存在だ」と支持し、イスラエルを敵視する。

 国境地帯で取材を続けるレバノンのジャーナリスト、ムハンマド・ファルハト氏によると、破壊された民家は1000軒以上に上り、複数の町村が壊滅した。国際移住機関(IOM)によると6月25日現在、レバノンの避難者は9万6829人に上る一方、人道支援が行き渡ったのは1万256人にとどまる。

 ◆ヒズボラ=1982年のイスラエルのレバノン侵攻に対抗し、イランの支援を受けて結成されたイスラム教シーア派の政治・軍事組織。アラビア語で「神の党」を意味する。反イスラエル、反米の武装闘争を繰り広げてきた。レバノン国会に議席を持ち、政界にも影響力を持つ。