ミャンマー軍政、兵器購入で大きく頼るのはタイの銀行 国連

AI要約

ミャンマー軍政の活動資金の出所として国際的な銀行の役割が指摘されている。タイの銀行が兵器や武装ヘリコプターの部品などの調達で主導的な役割を果たしていると報告されている。

ミャンマー内乱が続く中、軍政は民主派勢力や少数民族の武装勢力と戦い、市民に対する空爆も加速。国民の抵抗や経済危機も深刻化しており、数百万人の住民が居場所を失っている。

報告書によると、タイやシンガポールを通じて軍政との取引に関わった国際銀行が数多くあり、兵器や軍事物資の調達額は数億ドルに上る。しかし、制裁や国際圧力により一部の取引額は減少傾向にある。

ミャンマー軍政、兵器購入で大きく頼るのはタイの銀行 国連

香港/バンコク(CNN) 反政府武装勢力との交戦が続くミャンマー軍政の活動資金の出所として国際的な銀行が大きな役割を果たしているとする新たな国連報告書がこのほど公表された。

ミャンマーの人権状況に関する国連特別報告者のトーマス・アンドリュース氏がまとめた報告書で、ミャンマー軍政による兵器や武装ヘリコプターの部品など含む装備品調達でタイの銀行が主導的な役目を担っているとも主張した。

ミャンマー内乱は約3年ともなり、犠牲となった市民は5000人以上ともされる。軍は2021年2月のクーデターで実権を掌握したが、軍事闘争に転じた民主派勢力も含めた少数民族の武装勢力との戦いが強まっている。軍政はここ数カ月間、兵力や支配地の損失も被っている。

同報告者は、軍政は国民の広範な抵抗や貧困層が増える経済危機を抱える一方で、市民や民間インフラへの空爆などを加速していると指摘。居場所などを失った住民は300万人以上に達したとした。これらの空爆などは過去半年で「5倍」の規模に広がったとし、軍政への抵抗を封殺する試みとも形容した。

この圧迫には海外で手に入れた兵器が用いられるとし、「国際銀行によるサービスが支えている」と断じた。

報告書によると、ミャンマー国営銀行などを通じて軍政との取引にかかわった銀行は過去1年で7カ国の16行と判明。これには兵器入手、軍民両用の原材料が含まれた。金額は23年4月から今年3月にかけて2億5300万ドルと見積もった。

その上で外銀が介入した兵器輸入などは23年と比べ三分の一激減したとも報告。シンガポールからの輸出が急減したことが要因としている。「朗報は軍政の孤立が深まっていること。悪しきニュースは軍政は制裁網などの迂回(うかい)を狙い、利用する金融機関を変えたりするなど抜け道につけ込んでいることだ」と述べた。

ミャンマーによる兵器・軍事物資の調達先として3番目に多かったのがシンガポールに登録する企業などとの取引だった。しかし、政府の調査が入った効果で、ミャンマーへのこれら兵器などの流入は23年比で約90%落ち込んだ。

シンガポールに拠点を置く銀行は22年、軍政による金融機関網を通じての兵器入手などの70%以上に関与していた。この比率は23年までに20%を下回ったという。

軍政が代わりの金融機関を確保するため目をつけたのが隣国タイだった。報告書によると、22年から23年にかけタイに本拠を持つ企業などを経由しての兵器や関連物資の輸出は倍以上となり、金額にして6000万ドルから昨年は約1億3000万ドルに急激に伸びていた。

報告書は、タイの金融機関の利用への傾斜で最も「重要な役割」を果たしたのはサイアム商業銀行と明かした。同銀と軍政に関係する取引は22年には500万ドルをわずかに超える水準だったが、これが23年までに1億ドル以上に急拡大したという。

同銀は声明で、タイとミャンマーの間の「国際取引サービス」に関与しているが、主たる目的はミャンマー向けの消費者向け製品とサービスに関わる決済と強調。全ての反資金洗浄(マネーロンダリング)法は順守しており、内部調査でミャンマーとの事業契約に武器は絡んでいないことが判明したとも結論づけた。

タイ外務省の報道担当者は今回の国連の報告書に目を通し、事実関係などを調べているとした。タイの銀行などは他の主要な金融業の拠点と同様、銀行業務の正当な手順を守っていると弁護しながら、「(報告書を受けた)次の対応を決める前に事実確認が最初に必要」と続けた。