ヨーロッパとアフリカを結ぶ海底鉄道トンネル、2030年の完成を目指す

AI要約

スペインとモロッコの間に高速海底鉄道トンネルが計画されており、2023年に実行可能性調査が開始される可能性がある。

この計画は2030年のFIFAワールドカップの影響もあり、スペイン、ポルトガル、モロッコの三カ国共同開催に向けて進められている。

海底トンネルにより、マドリードからカサブランカまでの移動時間が5時間半に短縮され、年間1280万人の乗客を運ぶことが見込まれている。

ヨーロッパとアフリカを結ぶ海底鉄道トンネル、2030年の完成を目指す

今から5年後には、スペインの首都マドリードから高速列車に乗り込み、ジブラルタル海峡下の新しいトンネルを抜けて、モロッコ最大の都市カサブランカまで、5時間半で移動できるようになる可能性がある。

ジュール・ヴェルヌの小説にありそうな話だが、1979年には実際にスペインとモロッコの間でこの計画について最初の話し合いが持たれた。1981年まで実行可能性調査も行われていたが、この計画はそれ以降、進展を見ることがなかった。

だが、スペインとモロッコは現在、この野心的な事業を再検討している。その主な契機は2030年のFIFAワールドカップが近づいていることだ。ワールドカップ100周年となるこの大会は、初めて二大陸にまたがる三カ国の共同開催となる。ヨーロッパ大陸のスペインとポルトガル、そしてアフリカ大陸のモロッコだ。そのため、サッカーファンはできるだけ迅速かつ効率的に、これらの国々の間を移動して試合を観戦したいと思うだろう。21世紀の驚異的な技術がそれを可能にするかもしれない。

モロッコの国立海峡研究会社(SNED)は「ユーロ・アフリカ、ジブラルタル海峡固定連絡線」と呼ばれる計画の実行可能性の調査を開始すると発表した。スペインでは、ジブラルタル海峡横断固定通信研究協会(SECEGSA)の後援を受け、2023年に同様の研究が始まっている。

この計画が再検討されるきっかけとなったのは、モロッコがカサブランカとタンジェを結ぶ初の高速鉄道を完成させたことだ。これは今やアフリカ大陸で最も速い鉄道というだけでなく、モロッコが新たに重要な鉄道の計画に挑戦する準備ができていることを証明するものでもある。

ジブラルタル海峡は最も狭いところでは、ヨーロッパとアフリカ大陸の間に14キロメートルの間隔しかない。ここでスペインとモロッコを結ぶ高速海底鉄道トンネルの利便性を想像してみよう。このトンネルが実現すれば、マドリードからカサブランカまでの所要時間は5時間半に短縮できると予想される。現在の自動車とフェリーを使った12時間の旅や、2時間のフライト(空港までの往復を考慮に入れると、後者のほうがずっと長い)から大幅に改善されることになる。

この高速鉄道は、マドリードを出発すると、イベリア半島南端のジブラルタル海峡にほど近いスペインの都市、アルヘシラスに停車する。それから列車はジブラルタル海峡下の海底トンネルに入り、スペインのプンタ・パロマとモロッコのマラバタ岬の間を走る。次に停車するのはモロッコのタンジェだ。それから最終目的地のカサブランカに到着する。

アルヘシラスとタンジェ間の距離は約42キロメートルで、海底トンネル内の軌道は約28キロメートルだ。トンネル内の最も深い地点は海面から300メートル、最大勾配は約3%になる。

これは二つの大陸を結ぶ史上初の鉄道路線となり、ワールドカップの重要性はともかく、二カ国のみならずさらに多くの国々の既存の鉄道網をつなぎ、切り開くことになるだろう。ジブラルタル海峡横断固定通信研究協会の提言によれば、最大で年間1280万人の乗客を二大陸間で運ぶことができる見込みだという。工費は不明だが、推定では70億ドルから80億ドル(約1兆1000億円~1兆3000億円)になると見られている。

現時点では建設の開始時期や期限は決められていない。財源はおそらくホスト国のスペインとモロッコで調達し、欧州連合(EU)などから補助的な支援も得られるだろう。ヨーロッパ全土で高速鉄道の人気がかつてないほど高まっているこの時代にあってもなお、独創的で想像力に富み、興奮させられるこの計画は、成功する可能性が十分にありそうだ。