「軍事同盟+α」朝ロ条約…朝鮮半島統一は消された

AI要約

北朝鮮が20日に公開した朝ロの「包括的戦略パートナー関係条約」は、軍事的同盟の性格を持たず、国際秩序から科学技術、食糧、エネルギー、情報通信など幅広い分野での協力を含む内容となっている。

条約は、国際秩序の変革を目指し「一極世界秩序」に反対し、自主的な国際体系の樹立や協力を重視している。また、CSTOやSCOなどの機構への参加を支持し、北朝鮮の国際的な活動範囲が広がる可能性がある。

さらに、条約は制裁に抵抗し、相互の経済協力の拡大、朝鮮半島統一に関する条項の欠如などが特徴であり、両国関係の変化や新たな協力の展望が示唆される。

 北朝鮮が20日に突然公開した朝ロの「包括的戦略パートナー関係条約」は、前文と23の条項で構成されている。朝ロ関係の軍事的同盟の性格の規定はないが、国際秩序から科学技術、食糧、エネルギー、情報通信、文化交流までの広範囲な合意を含んでいる。北朝鮮とソ連が結んだ「朝ソ同盟条約」が軍事的同盟に集中したのに比べ、はるかに包括的な「同盟+α」の条約だと評されている。

■国際秩序

 条約は前文で「覇権主義的な意図と一極世界秩序を強要する策動」に反対し、「多極化された国際的な体系」の樹立を目標として提示した。また、「公正かつ平等な新たな国際秩序の樹立の指向」と「国際舞台で共同歩調と協力を強化する」(第2条)も明らかにした。米国の「一極世界秩序」に対抗するロシアのウラジーミル・プーチン大統領の長きにわたる目標に、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が積極的に参加し、反米・反西側の新たな国際秩序の確立という共同の目標を設定したのだ。

 また第7条は「双方は相互性に基づき、それぞれ一方が該当する国際および地域機構に加盟することを協力して支持する」とした。ロシアが主導する集団安全保障条約機構(CSTO)や上海協力機構(SCO)などに北朝鮮が参加し、国際舞台で北朝鮮の活動範囲が広まる可能性が高まった。

■制裁無力化

 条約には、北朝鮮とロシアが受けている国連安全保障理事会(安保理)による制裁などを無力化しようとする条項が多い。第16条は「治外法権的な性格を帯びる措置をはじめ、一方的な強制措置の適用を反対」し、第5条では相手の核心利益を侵害する行為に「参加しない義務を有する」とした。

 特に「宇宙、生物、平和的原子力、人工知能、情報技術などの様々な分野を含む科学技術分野での交流と協力を発展させ、共同研究を積極的に奨励する」(第10条)とする内容がある。2016年に採択された安保理の対北朝鮮制裁決議第2321号は、北朝鮮の大量破壊兵器の技術習得に寄与することを懸念し、北朝鮮との科学・技術協力を原則的に禁止したが、これを意に介さないという意味だ。北朝鮮の核・ミサイル開発のよって取られた対北朝鮮制裁の軸を押し倒す意図にみえる。また、北朝鮮のロシアに対する砲弾などの兵器支援は、制裁違反ではなく、両国の条約に従ったものだとする法的根拠を作ったものとも解釈できる。

■経済協力拡大、消えた朝鮮半島統一

 条約は、両国の経済協力を大幅に拡大するという内容を詳細に含めた。「相互の貿易量を増やすために努力し、税関や財政金融などの分野での経済協力に有利な条件を用意し、相互の投資を奨励して保護する」(第10条)をはじめ、「農業、教育、保健、体育、文化、観光などの分野での交流と協力を強化」(第12条)などに言及した。「食料およびエネルギー安全、情報通信技術分野での挑戦と威嚇に共同で対処するために相互協力する」(第9条)は、北朝鮮の食糧とエネルギー分野に対するロシアの支援拡大につながるものとみらえる。「地域間および辺彊(境界隣接地帯)での協力の発展」(第11条)もあるが、今回の首脳会議で朝ロが「豆満江(トゥマンガン)国境での自動車橋の建設に関する協定」を締結したと報じられた。

 この条約からは、過去の条約に共通して登場した朝鮮半島統一に関する条項が消えた。統一を消して南北関係を「敵対的な2つの国家の関係」と規定した金正恩委員長の意志が反映されたとみられ、ロシアもこれを容認したという解釈が可能だ。

パク・ミンヒ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )