タイタニック号探索の潜水艇事故から1年、ツアー再開への動きも

AI要約

豪華客船タイタニック号の残骸を探索するツアーの潜水艇「タイタン」が深海で大破した事故から1年が経過し、安全性を重視する民間用潜水艇メーカーがツアー再開の動きを見せている。

トライトン・サブマリンズは事故後、新たな潜水艇を開発して深海探査への投資を強化し、ラリー・コナー氏を含む投資家の支持を受けている。

オーシャンゲートとトライトン・サブマリンズは安全性や業界基準への適合性などで異なる立場を取り、投資家、業界、深海探査への影響に関する様々な議論が続いている。

タイタニック号探索の潜水艇事故から1年、ツアー再開への動きも

ニューヨーク(CNN) 豪華客船タイタニック号の残骸を探索するツアーの潜水艇「タイタン」が深海で大破した事故から、18日で1年。ツアー運営会社の米オーシャン・ゲートは昨年7月に営業を停止したが、安全性を掲げる他社がツアーの再開を目指す動きも出ている。

民間用潜水艇メーカーの米トライトン・サブマリンズは、事故を受けて深海探査への投資が強化されたと主張する。

米紙ウォールストリート・ジャーナルによれば、タイタンの事故の数日後、不動産業界の米富豪ラリー・コナー氏はトライトン・サブマリンズの最高経営責任者(CEO)との電話で、タイタニック号の深さまで到達するような潜水艇ツアーが安全に実現できることを世界に示すため、新たな潜水艇をつくるよう促したという。

コナー氏は同紙とのインタビューで、「海は強大な力を持つが、適切なやり方でかかわれば素晴らしく、楽しく、人生を変えるような経験ができる。それを世界中の人々に示したい」と話した。

トライトン・サブマリンの報道担当者がCNNに語ったところによると、今のところツアーは計画段階で、まだ日程を公表できる局面には達していないという。

オーシャンゲートは有人深海探査の業界で急成長した企業だが、規制を逃れたり、業界の基準に抵抗したりする異色の存在だった。

事故で死亡した同社の創業者ストックトン・ラッシュ氏は、タイタンの材料に採用した安価なカーボンファイバー(炭素繊維)が従来のチタン素材ほど安全でないと専門家に指摘された後も、安全性を主張し続けた。

ラッシュ氏はかつて米ジャーナリスト、デービッド・ポーグ氏とのインタビューで、安全を追求しすぎるのは無駄でしかないと力説。「安全だけを望むならベッドから出なければいい。車に乗らなければいい。何もしなければいい」と言い放っていた。

これに対してトライトン・サブマリンズは事故からの1年間、オーシャンゲートとの違いを印象付けようと努めてきた。(1)オーシャンゲートは業界内でたびたび警告を受けながら、それを無視して規制の網の目をくぐる異端児だった(2)同社の潜水艇の設計は極めて実験的で、他社が踏襲することはあり得ない――というのが主な論点だ。

トライトン・サブマリンズへの投資家には、米ヘッジファンド創業者のレイ・ダリオ氏、カナダの映画監督ジェームズ・キャメロン氏らが名を連ねる。

同社は、オーシャンゲートが避けて通った第三者機関による船体の検査も実施し、「深海では妥協などあり得ない」との立場を鮮明にしている。