イスラエル、停戦に極右政党が壁…「合意なら政権離脱」脅し 

AI要約

イスラエルの極右政党が新しいガザ停戦案に反発し政権離脱を脅したことで、ネタニヤフ首相はジレンマに直面している。

バイデン大統領が提示した停戦案に対し、極右は降伏として拒否反応を示しており、政権の存続が危ぶまれている。

極右は選挙で躍進し、政権の崩壊をもたらす可能性がある状況下で、ネタニヤフ首相は苦境に立たされている。

 【エルサレム=福島利之、作田総輝】パレスチナ自治区ガザでの戦闘の新しい停戦案に対し、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権に連立で入る極右政党が激しく反発している。戦闘継続を主張する極右は、現時点で停戦に合意すれば政権から離脱すると脅している。政権崩壊を恐れるネタニヤフ首相は、極右の主張を受け入れざるを得ないジレンマに陥っている。

 新停戦案は、米国のバイデン大統領が5月31日の演説で明らかにした。イスラエルがイスラム主義組織ハマスに示したもので、「6週間の完全な停戦(戦闘休止)」の間に、人質解放交渉を行うことなどを柱としている。

 この案について、極右政党「ユダヤの力」党首のイタマル・ベングビール国家治安相は3日の党の会合で「バイデン氏が示した案への合意は降伏だ」と反対を表明した。「宗教シオニズム」を率いるベザレル・スモトリッチ財務相は3日の記者会見で「内閣が降伏の提案を承認すれば、我々は内閣の一部でなくなる」と述べ、政権離脱をちらつかせた。

 バイデン氏は新停戦案を発表した際、「イスラエルが提案した」と言及した上で、「戦争の継続を求める勢力がいる」と極右を当てこすった。公共放送カンによると、ネタニヤフ氏は3日のクネセト(国会)外交防衛委員会で「バイデン大統領が示した提案は不正確だ」と述べ、停戦に合意しないとの見通しを明らかにした。

 極右は2022年の国会(議席120)選挙で14議席(8議席増)を獲得し、第3勢力に躍進した。ネタニヤフ氏が率いる右派のリクードは32議席で第1党だったが、過半数確保のために極右とユダヤ教超正統派政党と連立を組んだ。与党の議席は現在、過半数をわずかに上回る64議席しかなく、極右の離脱は政権の崩壊を意味する。

 「宗教シオニスト」とも呼ばれる極右は、パレスチナの暫定自治を定めた1993年のオスロ合意以降、「和平反対」を掲げ、勢力を拡大した。ヨルダン川西岸やガザを含めたパレスチナを「神がユダヤ人に与えた」と捉え、パレスチナ人の土地を暴力的に奪い、非公認の入植地「アウトポスト」の建設を進める。