「あれ、いやだから勝たなくていい」プロ初勝利の巨人ドラ1西舘、両親にこぼすほど苦手だったこととは

AI要約

西舘は延長10回の激戦でプロ初勝利を挙げ、チーム全体の連携と努力を称賛している。

かつては人見知りで口下手だった西舘が、プロ野球で成長し、メディアや先輩からの助言を受け入れつつ自らも積極的に学ぶ様子を見せる。

甲子園での過去の苦い記憶を振り払い、プロ野球での初勝利を収めた西舘が、ファンやチームメートからの祝福を受けて笑顔を見せている。

「あれ、いやだから勝たなくていい」プロ初勝利の巨人ドラ1西舘、両親にこぼすほど苦手だったこととは

◆JERA セ・リーグ 阪神1―2巨人=延長10回=(26日・甲子園)

 甲子園の魔物に、付け入る隙を与えなかった。西舘は甲子園を包むため息をBGMに、さっそうとベンチへ駆けた。同点の9回、森下を自己最速タイ155キロで左飛に封じ、大山を三ゴロに料理。最後は熊谷をカットボールで見逃し三振に仕留め、17球で3者凡退に斬ってとり攻撃につなげた。直後の延長10回に味方が勝ち越し、18試合目でプロ初勝利。「チーム全体として、粘ってつないで勝ち取った1勝なのですごくうれしい」と素直に喜んだ。

 記憶を塗り替えた。花巻東時代に3度、聖地のマウンドに立ったが、結果を出せなかった。「悔いの残る場所。自分が足を引っ張って終わった」。中大での4年を経て、もともと全球クイックモーションで投げ込む右腕が、足を上げる時間を2段階に変えるなどタイミングをずらして1回パーフェクト。「高校の時は全く力がなかった。少しは成長できたかな」と、手応えを口にした。

 人見知りの恥ずかしがり屋だった。小学3年時に野球を始める前から、岩手・一戸町でクロスカントリーとマラソンに打ち込んだ。「S&Bちびっ子健康マラソン岩手大会」では小1から小3まで3連覇(1、2年は1500メートル、3年は2000メートル)。ただ、優勝者インタビューが嫌だった。「出るのが恥ずかしくて勝ちたくない。あれ、いやだから勝たなくていい」と、両親にこぼすほどだった。

 そんな西舘がプロで殻を破った。口下手を自認しながら、「話すことは苦手ですけど、自分の考えを言葉にすることは重要」と、メディアを通じてファンにメッセージを送り、先輩へも自ら質問した。キャンプでは菅野から「いろいろ試した方がいい」と助言をもらい、クイック以外のフォームもテストした。新人最長タイの10試合連続ホールドを挙げた際には、大勢や高橋礼ら先輩がインスタグラムのストーリーズで祝福。純粋に野球と向き合い、先輩の助言を素直に受け入れる右腕は、チームメートから愛される存在になった。

 甲子園のファンからも祝福を受けたヒーローインタビュー。「1勝目というのは記憶に残る部分だし、これからも継続していけるように」と笑顔を咲かせた。少年時代と違い、ヒーローの座は格別だった。(水上 智恵)

 ◆西舘と甲子園

 ▽2年春 根尾(中日)、藤原(ロッテ)らを擁する大阪桐蔭との準々決勝で登板。4点ビハインドの2回から登板し、2回0/3を6安打7失点(自責5)と崩れ、0―19で大敗した。

 ▽2年夏 下関国際との1回戦で、延長10回に2番手で登板し、1/3回を投げて無安打無失点。チームは2―4で敗れた。

 ▽3年夏 鳴門との1回戦で3回から登板。最速145キロも5回2/3を6失点(自責4)。チームは4―10で敗戦。