【相撲編集部が選ぶ夏場所14日目の一番】琴櫻が阿炎に敗れ4敗目。ただ一人3敗の大の里、いよいよ初Vに王手

AI要約

琴櫻は優勝を目指す中、阿炎に黒星を喫し、厳しい状況に立たされる。

大の里が阿炎に勝てば史上最速の優勝が決定するが、負ければ大混戦となる可能性がある。

展開次第では3、4人による優勝決定戦になり、ドラマチックな結末が期待される。

【相撲編集部が選ぶ夏場所14日目の一番】琴櫻が阿炎に敗れ4敗目。ただ一人3敗の大の里、いよいよ初Vに王手

阿炎(押し出し)琴櫻

皮肉にも、前に出て攻めた日に黒星がついた。

 

琴櫻だ。13日目まで大の里とトップに並んでいたが、終盤に入っての相撲内容では、あまり自分から攻めて勝った相撲がなく、前に出て勝っている大の里と比べるとちょっと見劣りする感があった。

 

だがこの日、阿炎との対戦では立ち合いから積極的に攻めた、突っ張ってくる相手の腕を下からあてがいながら前に出て、東土俵に追い詰めた。

 

しかし……。押して出た土俵際で右腕を手繰られ、体を入れ替えられてしまう。一瞬、横向きになり、すぐ向き直ったが、体が伸びて余裕なし。阿炎に体をぶつけるような形から突かれ、青房下に押し出された。

 

初優勝に向けて、あまりに痛すぎる黒星。前日までは大の里とほぼ互角の優勝可能性があったが、これで、千秋楽に豊昇龍に勝ったうえで、3、4人による優勝決定戦を勝ち抜かないと優勝できない条件になり、もちろん可能性はまだ残すが、その実現確率はかなり低くなってしまった。

 

取組後はさすがに「ちょっとすみません。もう……」とつぶやいたのみ。あすはもはや他力本願がかなったうえで、目の前の一番、一番を勝ち抜いていく以外になくなった。

 

14日目を終わっての状況を整理すると、3敗が大の里ただ一人、4敗で豊昇龍、琴櫻、阿炎、大栄翔が続く形になった。優勝の可能性があるのはこの5人だけだ。そして、千秋楽は大の里と阿炎、豊昇龍と琴櫻の対戦が組まれた。

 

大の里が本割で阿炎に勝てば、その時点で優勝が決定。67年ぶりの新三役優勝(昭和32年夏場所の安念山以来)であり、幕下10枚目格付け出しからではあるが、デビューから7場所目(なんと1年と少し!)という史上最速Vだ。

 

大の里がもし阿炎に敗れた場合は、それはそれで大変なことになる。大の里、阿炎、そして豊昇龍-琴櫻戦の勝者と、少なくとも3人が優勝決定戦に進出、さらに、前の取組で大栄翔が勝った場合には、大栄翔も加えて4人の優勝決定戦となるのだ。

 

大の里にとっては、勝てば優勝だが、負ければ一気に大人数の優勝決定戦が確定するという、プレッシャーのかかる状況。そういうときの相手としては、阿炎は何とも嫌な力士だといえるだろう。だがどうにかここで決めてしまわないと、優勝決定戦に苦手の豊昇龍が上がってきたりした場合には、いっぺんに夢の初優勝が難しいものになる可能性もある。

 

一番の勝敗次第でここまで状況に振れ幅が出るというのはめったにないケース。こうなったらやはり石川県の方々に勇気をもたらす快挙を大の里に果たしてほしい気もするし、一方で3、4人による優勝決定戦があったら、それもワクワクドキドキになる気がする。さあ、決着はどうなるか。どちらにしても、ドラマチックなものになることは間違いない。

文=藤本泰祐