WBCが「プロ」なら五輪は大学・社会人の「アマチュア」中心に考えてもいいのでは?/寺尾で候

AI要約

2028年に開催されるロサンゼルス五輪と野球ソフトボールの競技復活について考察。

野球のWBCと五輪の参加チーム編成についての疑問を提起。

アマチュア選手を重視した五輪チーム編成の可能性について検討。

<寺尾で候>

 日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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 ロサンゼルス到着後に向かったのは、「ロサンゼルス・メモリアル・コロシアム」だった。ちまたではパリ五輪の余韻がさめやらない“オリンピックロス”の人が多いらしい。次回28年に開催地となるロサンゼルスに出かける衝動に駆られることになった。

 少し前、京都・南座で新作舞台「星列車で行こう」を観劇していた。主演はIMP.の影山拓也、「ハゲタカ」の作家で旧知の真山仁が脚本、演出家もよく知っている人で、青年たちが旅をしながら夢をつかむ作品にも背中を押されたようだ。

 その「メモリアル・コロシアム」は勇壮な姿を保っていた。01年米国同時多発テロ事件の際は聖火台に灯がともるなど、アメリカを象徴してきた。ロサンゼルス大会は、1932年、1984年に次いで3度目。過去2大会で、開会式、閉会式が行われたメイン会場だ。

 そして次のロサンゼルス大会では、「野球ソフトボール」が競技種目として復活する。パリ五輪は除外されていたから、金メダルを獲得した20年東京大会以来、8年ぶり。商業主義と指摘されるIOCも、消滅、復帰の繰り返しで、お忙しいことだ。

 もっとも野球ソフトボールが競技種目に追加されることは歓迎の意を表したい。しかし、ここで考えさせられるのは、野球の「WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)」と「五輪」のすみ分けについてだ。

 野球は1996年アトランタ大会までアマチュア選手が参加したが、20年シドニー大会からプロ・アマ混合になった経緯がある。そして現状は「ドリームチーム」をうたった、プロ中心の侍ジャパンが編成されてきている。

 26年に開催されるWBCは、世界一を決める大会として定着したから、“最強軍団”で戦うのは本線だろう。しかし、そのすぐ2年後に、ロサンゼルス五輪で再びプロ出身が大勢を占めた同様のチームで、ターゲットを金メダルに変えて戦うのは、ちょっとくどい気もする。

 WBCが「プロ」なら、五輪は大学・社会人の「アマチュア」を中心にしたチーム編成を考えてもいいだろう。プロがそろうことは経済的には潤うのかもしれない。だが大学・社会人選手の夢をつなぎ、アマチュア球界の活性化は底辺拡大にもつながる。ここはすみ分けを検討してもいいのではないだろうか。

 1984年のロサンゼルス五輪の野球は公開競技として行われ、日本は金メダルを獲得している。場所はドジャースタジアムだった。大リーガーが出場する可能性、運営方式など、さまざまなハードルも出てくる。世界的普及をレガシーとするなら、ここは一考の余地がある。(敬称略)